2016年10月、トヨタとスズキは共同記者会見で「両社の協力関係の構築に向けた検討を開始する」と発表した。ダイハツ、日野の子会社を除いたトヨタとの協力提携企業は、いすゞ、SUBARU、マツダなど国内に強力なメンバーが揃った。海外でもBMWやフォードなどと技術協力を実施している
トヨタ自動車の2017年(暦年)世界販売台数は、1038万6000台で前年比102.1%だった。ただ世界販売首位の座は2年連続で逃した。
世界販売1位は、独フォルクスワーゲン(VW)グループで1074万1500台、世界販売過去最高を更新して前年比104.3%だった。2位がルノー・日産・三菱自アライアンスで1060万8300台、前年比106.5%。そして、トヨタは、昨年の2位から3位に後退するという結果となった。
世界の自動車大手は、前世紀にGM、フォード、クライスラーの米ビッグ3が長い間、世界の自動車業界を牽引してきた。が、21世紀に入り、2000年代前半から米経済の低迷、2008年のリーマンショックを経て、米自動車ビッグ3が凋落する。対して、トヨタと独VWが覇権を争う構図に大きく変化した。
独VWは、重点的に投資する中国市場で前年比105.1%の418万台を売り、これが世界販売の差につながっている。2016年に燃費データ不正問題で窮地に陥った三菱自動車を傘下に入れたルノー・日産アライアンスは、2017年から正式に3社合計の世界販売が計上され、今回の結果となったわけだ。
トヨタは子会社のダイハツと日野を含むグループ全体の販売台数を発表している。日本国内では新型の小型車が牽引した結果、約233万台(前年比104.5%)だった。海外では「RAV4」などSUVが伸び、特に排ガス規制が強まる欧州ではハイブリッド車が増え、805万4000台(同101.4%)だった。
3位になったもののトヨタは、販売台数で過去最高を更新しており、「むやみに量を追わない」トヨタの世界戦略転換の方針に合致したものとして意に介さない。また、数字には出ないが、いすゞ、スバル、マツダ、スズキといった強力な提携関係構築も着々と進めている。これら提携先の販売台数を総合すると1800万台超の巨大グループとなる。
一方で、VWグループ、ルノー・日産・三菱自アライアンスは、相変わらず覇権主義が強く、販売世界一に拘りを見せる。
VWは、ディーゼル排ガス不正で、一時苦境に陥ったが、世界最大市場の中国で、トップに立っていることが大きい。また、ルノー・日産・三菱自連合のカルロス・ゴーン氏は、三菱自を手中にしたことで世界覇権の野望をあからさまにしている。
2018年、トヨタはグループ全体で1049万5000台(前年比101.0%)の販売を計画している。日本は新車効果の一巡したことで、5%減になる見込みだが、海外では3%増の827万台を見込む。
先に述べたように、トヨタは規模拡大を追わない経営方針に転換した。社内から「世界販売トップ」に固執するような声は聞こえない。第3四半期決算発表でも今通期見通しで純利益が前期比31%増の2兆4000億円と、2期ぶりに過去最高を更新する見込みだ。
トヨタ、世界販売台数ではVW、ルノー・日産・三菱自の後塵を拝することとなったが、利益規模はVWが日本円で1兆5000億円程度。ルノー・日産・三菱自連合の決算見込みは非公開だが、日産の純利益見込は7050億円でしかない。ルノーも同程度で、売上が2.1兆円とトヨタの純利にも満たない三菱自が、赤字解消とはいえ、利益が1000億円程度であるなら、利益面ではトヨタが圧倒的なトップにある。
トヨタは、今後の自動車業界の競争軸が大きく変化して行くことをしっかり認識し、豊田章男社長は、ことある毎に「自動車が、次の100年においてモビリティ社会の主役を張れる保証はどこにもない」との発言を繰り返している。
つまり、電動化や自動運転、コネクテッドカー、シェアリングなどの次世代技術を巡って、米グーグルやアップルなどのIT大手が強力なライバルになるとしている。
それらと戦うための原資を確保するために、コスト削減&利益優先という手綱は緩めない。(編集担当:吉田恒)