NHK幹部が森友問題「トップで伝えるな」

2018年03月31日 10:33

画・進むテレビのネット配信 NHKの来春ネット同時配信に民放テレビ局はどう動く?

NHK受信料には表裏一体のNHKの義務として「国民の知る権利」を確保する(国政を伝える、報道機関として公権力を監視する)義務がある

 NHK受信料には表裏一体のNHKの義務として「国民の知る権利」を確保する(国政を伝える、報道機関として公権力を監視する)義務がある。民主主義の根幹を支える情報提供の下に、受信料契約はその意味を持つ。このことを踏まえて、大問題の事案が29日の参院総務委員会で発覚した。

 日本共産党の山下芳生議員が「内部告発と思われる文書が届いている。ニュース7、NW(ニュースウオッチ)9、おはよう日本などの編集責任者に対し、NHK幹部が『森友問題の伝え方』を細かく指示している。トップニュースで伝えるな。トップでも仕方ないが放送の尺は3分半以内、昭恵さん(安倍総理夫人)の映像は使うな。前川喜平前文部科学事務次官の講演問題と連続して伝えるな、などというものだ」と深刻過ぎる内容だ。

 筆者もNHKNW9や11時台のニュースは時折チェックするが、森友問題の扱いには「何を考えているのか」と腹立つことが何度もあった。イライラした内容と山下氏の伝えた内容が符合していた。

 国会で多数を占める自民党のもとで、NHKはNHK予算審議がらみを気に、政権忖度姿勢かと報道機関として疑問に感じたが、山下氏が言われるように、NHK関係者の内部告発なら自浄能力も残っているようす。ある種、救われる話ではある。

 山下氏の問いにNHKの上田良一会長は「放送法の規定に基づいてNHKで編集権を行使する権限は会長にあると考えており、実際の業務運営においては放送部門の最高責任者である放送総局長に分掌し、その下でそれぞれ番組制作責任者が制作にあたっている」とした。

 上田会長は「個々の番組内容については現場に任せ、現場がその都度、自主的に判断している。公平・公正・自主・自律を貫いて、何人からの圧力、働きかけにも左右されることなく、『視聴者の判断のよりどころとなる情報を多角的に伝えていくことが役割だ』と考えている。これをしっかり守っていきたい」と答弁した。

 まさに、その答弁通りの情報提供を行うべきだ。答弁を読み上げるのではなく、自らの言葉で答弁して頂きたいとも感じた。山下議員は「上田会長には、敏感な感覚を持って頂きたい」と立ち位置に敏感であるよう求めた。

 山下議員は「このような文書が届くのは初めてだ。これほど(政権に)忖度するような状態がNHKで常態化しているというリアルな告発だ」と深刻に受けとめるべきと強調した。

 これに上田会長は「NHKのよって立つところは国民・視聴者の信頼と確信している。報道機関として自主自律・不偏不党の立場を守り、公平公正を貫くことが、公共放送の生命線であると認識しており、会長の職責をしっかりと果たしていきたい」と答弁した。是非言葉通りの実行をと期待したい。

 あわせて、NHK幹部が『森友問題の伝え方』を細かく指示した事実があったのかどうか、誰が、何のために、こうした指示を出したのか。

 NHKは幹部に対し局内調査の上、結果を公表すべきだ。一時のNW9や11時台のニュースを見た限り、こうした指示があった可能性が疑われる内容になっている。NHKの自浄能力に期待する。

 安倍政権の下では、NHKの今回の問題だけでなく、テレビやラジオ番組の『政治的公平』などを規定した放送法の条文撤廃を狙う動きなど、政治情報に対する信頼性を根本から損ないかねない重大な危険の動きもでている。この問題は別途取り上げたい。(編集担当:森高龍二)