新年度がスタートした4月2日は、多くの企業で入社式が執り行われた。大手電子部品企業などが密集する京都や滋賀でも、緊張感と期待を胸に新たな一歩を踏み出す新社会人たちのフレッシュな表情が溢れた。
折しも、同日に日銀が発表した企業短期経済観測調査によると、京都と滋賀の景気判断は前回の調査を2ポイント下回り、7期ぶりに悪化。スマートフォンや自動車向けの電子部品の販売は依然として好調を維持しているものの、製造業全体でも1ポイントマイナスと予断を許さない状況だ。そんな中、電子部品企業のトップはこれからの時代を担う新戦力に何を訓示したのか。
株式会社村田製作所の村田恒夫社長は、本社ホールに集まった273名の新入社員に向け、同社の中期構想で挙げている注力3市場(オートモーティブ、ヘルスケア、エネルギー)のビジネスチャンスと、「モノづくり力」を進化させつつ、世界の市場に安定供給を継続していくことが顧客から期待されていると述べた。
2030年の売上高10兆円を目標に掲げている日本電産株式会社の永守重信社長は、プロダクティブ(Productive)、プロアクティブ(Proactive)、プロフェッショナル(Professional)と3つのPに絡めて、グローバル企業としての心構えを訓示し、経営陣は新人社員が即戦力となるためのサポートを惜しまないと語った。
また、自動車・産業機器向け電子部品が世界市場でも好調なローム株式会社の澤村諭社長は、世界経済が大きな変革期を迎えていることを背景に、常に問題意識を持ち、変化を先回りして考える習慣を身につけることが必要だと述べ、「変えるべきものは変え、守るべきものは守る」と、グローバル企業の社員としての姿勢を説いた。
いずれの入社式でも印象的に感じたのは、例年にも増して、グローバル市場と未来を見据えた訓示が多くみられたことだ。ロームの澤村社長が語ったように、世界経済は今、人工知能やIoT、ロボット産業、ビッグデータなどによって、「第4次産業革命」といわれる大きな波を迎えようとしている。消費者の間でも、仮想通貨の普及やインターネットによって世界の垣根が取り払われようとしている今、新入社員とはいえ、目の前の仕事に翻弄されるのではなく、これまで以上にグローバルな視点と広い視野が求められている。世界中の企業がライバルであり顧客である電子部品企業なら尚更だ。社会人としていろいろな経験を積んで多くを学び、一日も早く世界に通用する企業人に成長し、日本経済の推進力となって活躍してくれることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)