行政がゆがめられた。国家戦略特区制度を活用した加計学園獣医学部設置への過程に文部科学行政の事務方トップだった前川喜平前文部科学事務次官が疑惑を指摘したが、今や、加計問題と森友問題により、行政への信頼は地に落ちたと感じている人は多いだろう。
安倍内閣は公文書改ざん・隠ぺい・廃棄で国会を混乱させたことや行政への信頼を失墜させた責任を取り、総辞職を考える時期に入っているのではないか。
加計問題のみを取り上げても、2015年4月2日に総理官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が愛媛県と今治市の職員、加計学園幹部と面会し、加計学園の案件を「首相案件」としていた可能性が色濃くなっている。愛媛県の中村時広知事の10日の会見で県職員の面会時の「備忘録」に、その記録があり、13日には齋藤健農林水産大臣が省内に面会記録文書があった、と発表した。
中村知事は記者会見時に農水省、文科省、内閣府へ説明のため、県職員作成文書が渡したことを説明していた。農水省内で見つかったことは、これを裏付けるものになったといえる。齋藤大臣が公表した文書にも「本件は首相案件」とする記載があった。
それでも柳瀬首相秘書官は「記憶の限り、愛媛県や今治市職員と会っていない」とし、一つ一つ相反する資料が積み重なる中でも記憶にはないとしている。
首相秘書官が首相官邸で県職員、市職員、加計学園幹部と面会したとすれば、首相が知らないはずはなく、面会後も面会内容を秘書官は首相に伝えるはずで、そうすれば加計学園の獣医学部新設計画を知ったのは国家戦略特区で加計学園が事業者に決まった「2017年1月20日だった」という首相答弁が根底から覆されることになる。
だから面会事実そのものを否定せざるを得ないのではないのか。こうした不自然さが国の行政に対する不信感をさらに増幅させている。加えて東京新聞は「愛媛県今治市の幹部ら一行が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)に面会する直前の2015年3月、首相官邸側から文部科学省に『愛媛県や今治市、加計学園の関係者が近く首相官邸を訪問する』と伝えていたことが11日、文科省関係者への取材で分かった」と12日報じた。
ますます、柳瀬氏のコメントと符合しない内容だ。面会したという愛媛県職員の備忘録と柳瀬氏のコメント。どちらが信用できるのか、客観的資料が物語っているのではないか。
日本共産党の志位和夫委員長は記者会見で「愛媛県文書の『真実性が極めて高い』とした。理由は(1)愛媛側は文書の記録、首相側は『記憶の限り』。(2)愛媛側には虚偽を書く動機がまったくない(3)国家戦略特区の申請など現実に起こった事態が愛媛県文書の通りになっている。
そのうえで「愛媛県文書が事実なら『関与していない』という首相の主張は根底から覆る」「辞任は不可避」とした。愛媛県職員の備忘録が事実なら、森友問題、防衛相自衛隊の日報問題などなど、その責任をとり「内閣総辞職」をしていただかなければならない。
安倍内閣と安倍内閣を支える与党が、それぞれに国民に対し責任を果たしきるというのであれば、加計問題では柳瀬氏に面会した愛媛県職員、今治市職員、柳瀬元首相秘書官、藤原豊前内閣府審議官、加計孝太郎「加計学園」理事長の証人喚問を行うこと。
森友問題では迫田英典元理財局長、安倍昭恵総理夫人、昭恵総理夫人付きだった谷査恵子氏、今井尚哉総理秘書官の証人喚問に積極的であるべきだ。ことは、この段階に来ていることを認識すべきだろう。
身内・与党の自民党の石破茂元幹事長は13日のブログで「柳瀬前総理秘書官の『記憶の限りでは愛媛県職員に会っていない』などとするコメントには、なんとも歯切れの悪さを感じます。総理の仰る通り、『総理の意向で行政が左右されたことはない』ということに信頼性を持たせるためにも、問題となっている事実に関して曖昧な立場を採るべきではありません」と書いた。柳瀬氏は曖昧さを払拭すべきです。
石破氏は「森友問題にせよ、加計問題にせよ、挙証責任は政府の側にある、そこから逃れるべきではない。『時が経てばやがて沈静化する』などと思っていては、政府・自民党に対する国民の信頼感をじわじわと失わせる結果に繋がることを肝に銘じなくてはなりません」と危機感を示した。政府・自民党ともに、政権がかかった案件として取り組むべきだろう。(編集担当:森高龍二)