【主要企業決算】外需型企業4-12月期決算、今後の円安プラス効果に期待

2013年02月17日 08:59

 主要企業の4-12月期決算発表が今週でほぼ出揃った。決算が発表されて投資家やアナリストがまず見るのは「通期の業績見通し」だが、「上方修正なら株価アップ、下方修正なら株価ダウン」と単純にはいかないのが株式市場。証券会社あたりが銘柄にレーティングをつける際の根拠にする「市場予測」を上回らないと株価が下がることもある。ましてや4〜12月期決算で良い業績数字が出ているのに通期の上方修正を行わなかったら、理由をあれこれ詮索された末、その銘柄には失望売りの「罰」が与えられる。この週は調整局面で相場の地合いが良くなかったためか、そんな現象が目立っていた。昨年末のお祭り騒ぎのような株価上昇局面に当たるよりもそのほうが、企業決算に対する市場の評価がはっきりわかる。

 ここ最近の円安により注目を集めている外需型企業の決算をみてみると、新日鐵住金<5401>が、売上高は0.1%増の3兆276億円、営業利益は59億円の赤字(前年同期は821億円の黒字)、純利益は1519億円の赤字(前年同期は12億円の赤字)。船舶向け鋼材などの需要が減少した上に中国などの供給過剰で鋼材市況が低迷。設備の減損処理、旧住友金属株の売却損などで特別損失が2340億円発生したことも業績を悪化させた。通期業績見通しは売上高4兆3000億円(前期は4兆909億円)、経常利益は11月時点のコメントから100億円上方修正して600億円(前期は1430億円)、最終損益は1400億円の赤字(前期は584億円の黒字)を予想している。年間配当見通しは前期より1.5円減配の1円(※合併日が10月1日なので、9月30日以前は旧新日鐵、旧住友金属の合計)。通期想定為替レートはドル円80円。

 三菱マテリアル<5711>は、売上高は12.1%減の9568億円、営業利益は9.2%減の396億円、純利益は15.6%増の305億円。復興需要でセメントの国内出荷は好調でも、エコカー補助金の終了、中国での不買運動を背景に銅の自動車向け需要が後退し、銅価が低迷したのが響いた。通期業績見通しは営業利益を80億円下方修正し、純利益を20億円上方修正。年間配当見通しは4円で据え置き。通期想定為替レートは、ドル円は79円を83円に、ユーロ円は100円を107円に改めた。

 ダイキン工業<6367>は、売上高は3.4%増の9363億円、営業利益は1.3%増の611億円、純利益は37.5%減の195億円。空調機器はヨーロッパでは不振でも国内や中国では好調で化学部門の減収を補った。純利益の押し下げ要因の有価証券評価損も株高で縮小しつつある。増収減益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置き。通期想定為替レートはドル円80円、ユーロ円105円。

 オリンパス<7733>は、売上高は10.2%減の5612億円、営業利益は5.2%減の246億円、最終損益は76億円の黒字(前年同期は330億円の赤字)。内視鏡など医療部門は好調でも海外でデジタルカメラの販売が振るわず、カメラ部門は販売台数が24%減になりその営業赤字幅も拡大した。通期業績見通しは売上高を170億円、営業利益を30億円、純利益を20億円、それぞれ下方修正する。無配の見通しは据え置き。想定為替レートはドル円は80円を90円、ユーロ円は100円を120円に改めた。

 パイオニア<6773>は、売上高は4.3%増の3290億円、営業利益は73.9%減の13億円、最終損益は97億円の赤字(前年同期は65億円の赤字)。国内のカーナビも欧米でのオーディオ販売も光ディスクドライブも不振で、利益を押し下げた。通期業績見通しは売上高を90億円、営業利益を50億円、純利益を50億円、それぞれ下方修正する。最終損益見通しは10億円の黒字から40億円の赤字に変わった。年間配当は無配継続。想定為替レートはドル円は77円を90円に、ユーロ円は100円を120円に改めた。決算と同時に800人を削減するリストラ策を発表している。

 マブチモーター<6592>は12月期本決算。売上高は8.1%増の852億円、営業利益は64.8%増の50億円、純利益は63億円(前年度は4億円の赤字)。パソコン不況の直撃を受け音響・映像機器向け、光学・精密機器向けモーターが落ち込んだが、パワーウインドー用、パワーシート用など自動車電装向けモーターが2割以上伸びてカバーした。円安で為替差益も計上している。2013年12月期の通期業績見通しは、売上高は10.3%増の940億円、営業利益は38.6%増の70億円、純利益は1.3%減の63億円。年間配当見通しは期末に創立60周年記念配当20円を加え120円。通期想定為替レートはドル円86円。

 日揮<1963>は、売上高は13.4%増の4415億円、営業利益は0.7%増の471億円、純利益は17.1%増の364億円で過去最高。エネルギー開発は全世界的に活発で受注環境はよく、カタールのガス処理プラント、オーストラリアのLNGプラントなど大型案件の工事が順調に推移。増収増益の通期業績見通し、前期から5円増配し43円の年間配当見通しは据え置き。通期想定為替レートはドル円78円。10人が犠牲になったアルジェリア人質事件の影響は現時点では算定不可能という。

 輸出関連企業に円安のプラス効果が出てくるのは少し後になりそうだ。4月末頃から5月にかけてピークを迎える3月期企業の本決算に向けて、1〜3月の第4四半期にどれだけ業績を改善できるかがポイントになるが、「リストラをやりすぎて人材不足でビジネスチャンスを取り逃し業績を伸ばせず」というケースも出てくるかもしれない。いずれにせよ、今後の動向が注目されるところだ。(編集担当:寺尾淳)