トヨタの米子会社TRIが、既存テストコース内部の約24万平方メートルの敷地に、新たな施設を建設。公道上では実施困難なエッジケースのテストを実施、ガーディアン・モード(高度安全運転支援)実験車の開発を加速させる
トヨタ自動車は、3月20日、米ライドシェア最大手ウーバー(Uber)テクノロジーズの自動運転車が米アリゾナ州で死亡事故を起こしたことを受け、米国における自動運転システム“Chauffeur”の公道実験を一時的に中断していた。「自動運転車の運転席に乗る社員の心理的な負担に配慮した」結果だという。
トヨタは、米国ミシガン州やカリフォルニア州で自動運転車の走行実験をしていた。ウーバーとトヨタは、自動運転技術の共同開発について協議を続けている。
一方、そのトヨタの子会社で、米国で人工知能等の研究開発を行なっているToyota Research Institute, Inc.(TRI)は、自動運転開発用の新たな施設の建設を発表した。TRIは、ミシガン州・オタワレイク市にあるミシガン・テクニカル・リソース・パーク(MITRP)内の60エーカー(約24万平方メートル)の土地に新たなテスト施設をつくる建設許可を提出し、2018年10月に使用開始する予定だ。
TRIはこの施設を専有し、公道上では危険が伴うエッジケース(特異な状況下で発生する事例)の運転シナリオを、安全な環境で再現し、テストを行なう計画だ。
TRIの自動運転技術担当・上級副社長であるライアン・ユースティス氏によると、「我々自身の手でコースを建設することで、とくにガーディアン・モード(高度安全運転支援)に対する試験が容易となり、より迅速な車両性能開発に繋がると考えている。新施設では、さまざまな運転シナリオを柔軟に再現するテストが出来るようになり、人間が主体的に運転しつつ、事故を起こさないクルマづくりに、より一歩近づくことになる」という。
このTRIの新施設は、MITRPの既存の1.75マイル(約2.8km)の楕円形テストコースの中に建設され、混雑した都会の交通状況や、滑りやすい路面、入口・出口のある、片側4車線の高速道路などの模擬施設を含む。
TRIはMITRPと土地のリース契約を結び、新施設の設計、建設、メンテナンスなどを実施。TRIは今回の新施設以外に、MITRPが所有・管理する他のクライアントにも提供されている既存の楕円形コースやその他の施設を使用したり、サービスを受けることも可能だ。また、TRIはカリフォルニア州のGoMentum Station、ミシガン州のMcityやAmerican Center for Mobilityともパートナーシップを結んでおり、TRIはこれらの施設に加え、今回の新施設を活用することで、公道外でのテストをより広範に行なえる。
MITRPはミシガン州ホワイトフォード郡区のオタワレイク市に1968年に大手部品メーカーのテストコースとして設立された。この研究施設は、2010年に不動産開発会社に売却され、現在では乗用車・商用車・公道外で使用する特殊自動車や部品サプライヤーのテストや先進技術開発のためのテストコースとして使用されている。(編集担当:吉田恒)