自動運転技術の光と闇。究極の安全性能を目指して

2018年03月31日 16:28

画・自動運転

自動運転に対する安全性への関心は、より一層高まることになるのは間違いないだろう。

 近頃、自動運転技術(ADAS)にまつわるニュースが自動車業界を賑わせている。

 東京ビッグサイトで1月に行われた「オートモーティブワールド2018」では、トヨタ自動車が、サービスカー向けにレベル4の自動運転を早期に実現することを発表して話題となったが、今度は、3月下旬までに自動運転技術の技術開発を促進する目的で、新会社「Toyota Research Institute Advanced Development(TRI-AD)」を設立することも発表している。

 また、いすゞ自動車と日野自動車も3月19日、トラックとバスの自動運転技術を共同で開発したことを発表した。両社が開発したのは、車両同士を通信でつなぐことで先行車のアクセルやブレーキを後続に伝えたり、信号機の点灯色を受信したりするシステムなど「隊列走行」の実現に必要な基礎技術や、バスが自動でハンドル操作と減速をしてバス停に止まる技術など。とくにトラックの隊列走行に関しては、政府も22年までに高速道路での実用化を目指しており、今年1月に新東名高速道路で行われた実験には、両社も参加している。

 ところが、その一方でアメリカでは同じ3月19日に、配車大手ウーバー・テクノロジーズの自動運転車が衝突事故を起こし、女性1人が死亡するという痛ましい事故が発生した。これにより、ウーバーは自動運転車の試験を全て中断しており、今後の動向が注目されている。

 警察庁の発表によると、平成29年中(2017年1月~12月)は472069件の交通事故が発生しており、負傷者は579746人、死傷者は3694人となっている。また、米国では年に600万件以上の衝突事故が起きて、4万人近くが死亡しているといわれている。自動運転技術が普及すれば、わき見や居眠りなどの人為的ミスが招く事故が世界中で激減することが期待されているが、今回のウーバーの事故はたった1件ではあるものの、自動運転の危険性を浮き彫りにして警鐘を鳴らすには充分、影響力の大きな1件となった。この事故をきっかけに、自動運転に対する安全性への関心は、より一層高まることになるのは間違いないだろう。

 自動運転技術が普及するためには、開発の過程や製品機能レベル、部品の一つ一つにまで安全と安心が配慮されていなければならない。例えば、その指標の一つとして、国際規格「ISO 26262」がある。「ISO 26262」は2011年11月に策定された車載電子制御の「機能安全」に関する国際規格だ。「機能安全」とは、車載電子制御における故障のリスクを算出し、それを軽減する仕組みを、機能の一つとしてあらかじめシステムに組込む安全方策のことである。「ISO26262」はこの「機能安全」を実現するための開発プロセスを標準化した国際規格だ。いわゆるTeir1と呼ばれる大手自動車部品メーカーは既に認証取得済みだが、近年は車載部品を構成する半導体レベルでも安全性能に対する市場欲求が高まっているという。そのような中、日本の半導体メーカーでは先日ロームがこれをいち早く第三者認証機関より取得し、「ISO26262」に準拠した開発プロセスを順次自社製品に適用していくと発表した。今後、他の半導体企業も認証取得に動き出すはずだ。

 言うまでもないことだが、自動車事故は数で判断すべき問題ではない。たとえ1件でも事故が起これば、それは安全な乗り物とはいえないのだ。近い将来、自動運転の車が爆発的に普及するときがやって来るだろう。その時、世界で最も安全性を信頼されて選ばれるのが、日本メーカーの自動運転車や部品であることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)