先月20日、中小企業庁は「2018年版中小企業白書・小規模企業白書」を公表した。概ね16年から17年のデータに基づく現状分析では「中小企業の景況感は改善傾向にある一方、大企業との生産性格差は拡大」しているとしている。
中小企業の経常利益の推移を見ると16年までに過去最高水準を記録し、景況感も改善傾向にあり、都市と地域間のばらつきについては17年に拡大の兆候は見られるものの長期的には縮小傾向で推移している。
従業員1人当たりの付加価値額である労働生産性についてみると、リーマンショックからの回復期である10年以降大企業は20~30%程度の労働生産性の向上が見られるのに対し、中小企業では製造業・非製造業ともに10%以下の伸びとなっており、両者の格差は拡大している。 16年現在で労働生産性は大企業の製造業で1320万円、非製造業で1327万円であるのに対して中小企業では製造業が549万円、非製造業が558万円と倍以上の格差まで拡大している。
中小企業の従業員の過不足DIをみると、全産業においては11年の後半以降「不足」が「過剰」を上回り拡大傾向で推移し人手不足感は深刻化している。中でも建設業の人手不足が深刻で全産業の平均から大きく乖離し、その差は拡大傾向にある。またサービス業が一貫して全産業平均より深刻な状態を維持しており、近年では製造業が平均より深刻な水準に落ち込んでいる動きが見られる。
小規模事業所における人手不足への対応策は「経営者の労働時間を増やす」が53.9%と最多で、白書では「人手不足を背景に、小規模事業者では経営者に業務が集中」していると指摘している。こうした現状認識を前提に白書では「業務の見直しやIT利活用等を進めることを通じて、間接業務の業務負担を軽減し、経営者の業務効率化を進めることが急務の課題」と指摘している。こうした取り組みのケーススタディとしてモバイルPOSレジ等を使い業務を効率化し、売上向上につなげた長崎県松浦市の農園の取り組みが紹介されている。
この他、生産性向上を実現するIT化へのためのポイントとして「多能工化・兼任化」、「支援機関の役割」などの10ポイントが指摘され、こうした観点から取り組みを行った事例が紹介されている。中小企業庁は「生産性向上に向けたヒントを提供することを目指した実践的な白書とした」と述べている。(編集担当:久保田雄城)