日産は2050年までに、同車が販売する新型車のCO2排出量を90%削減するとした目標を掲げている。それを具現化するためのひとつの手段となり得る革新的な内燃機関「VCターボ」エンジンの基本的な技術を、先般開催された「人とクルマのテクノロジー展」で分かりやすく展示していた。
日産は、クルマの電動化を強力に推し進める一方で、レガシーな内燃機関の大幅な効率向上にも取り組む姿勢を示したわけだ。
VCターボエンジンは、熱効率を決めるキーパラメーターである圧縮比を連続的に可変させることで、極めて高い環境性能と強力な動力性能を同時に達成する世界初の量産可変圧縮比エンジンである。
これまでの一般的なエンジンでは、シリンダー内を上下に動くピストンはコンロッドでクランクシャフトに連結。ピストンの上死点・下死点の位置は変えられない。が、しかし、日産VCターボエンジンでは、コンロッドをマルチリンク機構とし、リンクの端をアクチュエータで稼働させ、ピストンの上死点・下死点を変化させる。この結果、エンジンの圧縮比を8:1から14:1まで、自在に変化させることができた。
圧縮比とは、エンジンが外部の空気を取り込む吸気過程において、混合気(燃料と空気が混ざった気体)の圧縮率を示す値だ。通常、この圧縮比が高いほどエンジンの効率は高まり、燃費も向上するが、ノッキングを起こしやすいというデメリットとトレードオフとなる。
対する、VCターボエンジンは可変圧縮比によって、効率よくエンジンを回すことができるのが特徴だ。
同時にこのマルチリンク機構は、ピストン下降時のアッパーリンクが、ほぼ垂直な姿勢を保つため、シリンダーとピストンの摩擦が低減される。結果としてシリンダー内の燃焼爆発圧力が効率的にクランクシャフトに伝わり、しかもエンジンの振動が大幅に抑えられるという。
しかも、新開発の高効率ワイドレンジターボとその過給圧を細かく制御する電動ウエストゲートの採用で、いわゆるターボラグを抑え、大きな出力が得られるとも。組み合わせる電動VTC(可変バルブタイミングコントロール)で、一層の高効率化を図っている。(編集担当:吉田恒)