国際的な「ZEV規制」、対応が遅れると日本車は市場からスピンアウトする?

2018年05月27日 10:55

週末

国際的にもピュアな量産型電気自動車となった日産リーフ、写真は2代目たる現行モデル。エンジンルームならぬボンネット下には、モーターやパワーコントロールユニット、充電システムなどが収まっている

 米国に端を発した「ZEV(Zero Emission Vehicle)規制」問題。日本では、あまり問題視されていないが、なかなか深刻な状況にあるようだ。復習を含めて「ZEV規制」を考える。

 そもそも「ZEV規制」とは、大気汚染が深刻な米カリフォルニア州ロサンゼルス市において、同州の大気資源局(CARB:California Air Resources Board)が施行した制度で、1994年に始まった。1994年以降、その規制値は年を追う毎に厳しくなっている。

 現在、同州内で一定数以上の台数を販売する自動車メーカーは、一定割合(2017年は14%)の「ゼロ・エミッション・ヴィークル/Zero Emission Vehicle」、つまり排出ガスを一切出さないで走行できる自動車の販売を義務づける制度だ。

 具体的にいうと、カリフォルニアで年間10万台のクルマを販売するメーカーは、その内の1万4000台をZEVとしなければ、罰金を課すということ。

 2018年にはZEV販売比率が16%になり、ハードルはさらに高くなった。加えて、同州内で2017年に6万台以上のクルマを販売した12社が対象になった。米ビッグ3は当然だが、日本のメーカーではマツダが新たに加わり、トヨタ、日産、ホンダの4社が対象となった。日本以外では、独メルセデス・ベンツ、同じくBMWとフォルクスワーゲン(VW)、韓国の起亜、現在(ヒュンダイ)が新たに加わった。

 なお、2017年までZEV規制クリアの対象車だったハイブリッド車(HV)は、その対象から除外された。これまで「クレジット」と呼ばれる規定台数をHVでカバーしてきたが、トヨタやホンダが得意としてきたZEVの一端を担った省燃費技術が排除された訳だ。日本では未だに人気のハイブリッドカーだが、国際的には、もはやエコカーとは認められなくなったということである。

 ZEVの分類を簡単に記すと、概ねタイプ1は50?70マイルの航続距離のEV(含むPHV)がクレジット2点(台数に匹敵)、タイプ1.5は75?100マイルの航続距離のEV(含むPHV)がクレジット2.5点、タイプ2は100?200マイルの航続距離のEVがクレジット3点、タイプ3は200マイルの航続距離のEVおよび水素によるFCVがクレジット4点となる。

 2018年現在、同州が認める「ZEV規制」をクリアする対象車は、完全な電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)、そしてプラグインハイブリッド(PHV)となる。各メーカー共に、対応が遅れると市場からスピンアウトする可能性のある規制なのだ。

 トヨタなどの動きも急で、昨年末には同社とパナソニックが記者会見を行ない、車載用角形電池事業について協業の可能性を検討することに合意したと発表した。PHVやEV用の大容量でリーズナブルなバッテリー開発を推し進める。

 同様のZEV規制は、米国の他州へ広がりをみせ、アリゾナ、コネチカット、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューメキシコ、オレゴン、ニューヨーク、ロードアイランド、バーモントの11州で採用されている。

 一方、大気汚染が破滅的なレベルに達している中国では、中国版「ZEV規制」、「NEV(New Energy Vehicle)規制」が2018年から導入された。対象となるメーカーは規制条件をクリアすることが求められる。各メーカーNEVを売ることによって得られたクレジットを、クレジットが足りないメーカーに売ることができる点など米ZEV規制と同じような規制制度だ。EV/PHEV普及のために中国は、かなり強力な取り組みを行なっており、世界一のEV/PHEV大国となってきそうだ。

 いずれにしても、自動車販売世界一の中国は非常に大きなEV/PHV市場となるのは間違いない。が、その電力供給事情など解決できていない問題・課題も多い。同時に、世界の自動車メーカーが電池を含めたサプライヤーと組んで中国市場をどのように攻略するか、日本メーカーも含めて、中国市場への対応は悩ましい問題となりそうだ。(編集担当:吉田恒)