長引く不況の影響による共働き世帯の増加や核家族化の進行など、子供を預けられる保育園や託児所の需要性は高く、また、今後も引き続き高い水準で推移すると考えられている。しかしここ数年、待機児童問題も深刻化しており、供給が需要に追いつかず完全な解消には至っていない。
矢野経済研究所が保育園・託児所市場に関する調査結果 2012」を発表している。同調査における保育園・託児所市場とは民間(社会福祉法人等を含む)の運営する保育所・託児所を対象とし、認可外保育所を含むという。これによると、2011年度の保育園・託児所市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比107.2%の4,880億円であったが、2012年度は前年度比107.4%の5,240億円、2013年度は同108.8%の5,700億円を予測しているようだ。
昨年、幼稚園と保育所の機能を一体化させた総合こども園の創設が見送られ、現行の認定こども園を充実化させる方針が決まったが、残念ながらこれにより待機児童が解消されるまでにはいかないようだ。しかし自治体の財政難を背景に、認可保育所の民間(社会福祉法人等を含む)への開放が進むことでで、民間企業(社会福祉法人等を含む)における保育所設立も引き続き活性化していくと考えられる。
また、認可外保育所設立の動きには、保育サービス専業事業者のほか、周辺産業からの新規参入もあり、昨今では鉄道事業者が自社沿線で託児所を展開している事例が目立っている。首都圏ではJRや私鉄などが駅構内や駅周辺の遊休地などを活用し、沿線の主要駅を中心に保育施設を開設。鉄道事業者各社では通勤途中に利用できる利便性の高さを訴求し、一時預かりサービスの提供など、サービス内容を多様化させており、各事業者の独自性を打ち出しやすい分野としても注目を浴びている。
しかし労働集約型産業である保育サービスにおいて、保育士の慢性的な不足は非常に大きな課題となっている。保育所の新設が進んでいることも、保育士不足に一層の拍車をかける形となっているようだ。保育施設の運営事業者間において、保育士の確保競争は激しさを増しつつあり、保育士確保が保育サービス事業拡大の鍵となるだろう。
現在、少子高齢化を背景に、子育て支援への関心が高まっており、出産・育児に関する政府の対策も充実しつつあるなど、ベビー関連市場は注目を集めている。また消費税増税が実施された場合は、子育て支援への財源確保が見込まれるなど、政府の子育て支援策の拡充が期待されるところだ。
今後も民間運営による保育園・託児所市場規模は、保育サービス事業への異業種参入もあり、堅調な市場拡大を見込める。就職難が深刻な今、現実的に共働きも難しい状態ではあるが、各方面から働く環境を充実させることも経済の活性化につながると考えられる。(編集担当:宮園奈美)