7月12日、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案が参院厚生労働委員会で可決され、今国会で成立する見通し。改正案では、大勢の人が利用する施設の屋内を「原則」禁煙にするといった内容で、屋内完全禁煙策には至っていない。
7月12日、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案が参院厚生労働委員会で可決され、今国会で成立する見通し。東京五輪・パラリンピック前の2020年4月に全面実施される見込み。改正案では、大勢の人が利用する施設の屋内を「原則」禁煙にするといった内容で、屋内完全禁煙策には至っていない。また、飲食店については客席の面積が100平方メートル以下などの条件を満たす場合、喫煙可能であることを掲示の上、喫煙OKとされる。病院や学校、行政機関などの敷地内は原則禁煙だが、屋外に喫煙所を設置することを認めている。
16年時点で、公共の場を屋内完全禁煙とする国は、英国、カナダ、ブラジル、ロシアなど55か国。これらの国では「公衆の集まる場所」(Public space)、すなわち医療施設・大学・大学以外の学校・行政機関・事務所・飲食店・バー・公共交通機関、の8か所には屋内全面禁煙義務があるとし、法律を定めている。飲食店やバーなども完全禁煙とされているのは、利用する側の利便性以上にそこで働く従業員を受動喫煙から守ることを重視しているため。WHOでも「分煙では受動喫煙を完全に防ぐことは困難」とされている。なお、これらの国では屋外での喫煙に関する法律は定められていない。
日本の受動喫煙対策は、先進国の中では最低レベルとされてきた。東京五輪・パラリンピックまでにWHOとIOCが求めているのは「公衆の集まる場所」(Public space)の完全禁煙なので、今回の改正案でも不十分と言える。日本が完全屋外禁煙に踏み切れないのは、地方公共団体による「路上喫煙禁止条例」を合わせるとまったく喫煙できないエリアが出現することへの懸念も一要因だろう。仮に屋外に喫煙所を設けたとしても、海外からの観光客などが迷うことなく利用できるかというと疑問が残る。北京五輪開催時の中国さえも、公共の場(飲食店含む)の全面禁止を義務付け、違反者への罰金条例も定めた。日本の受動喫煙対策が世界基準に追いついたとは言い難く、規制内容については批判の声が出そうだ。(編集担当:久保田雄城)