自民案「6増」に説得力なし、7党が問題視

2018年07月16日 07:59

 自民党が一票の格差是正に参院定数「6増」の公職選挙法改正案を国会に提出し、今国会成立を目指していることに、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、自由党、希望の党、日本維新の会、社会民主党が15日のNHK日曜討論で「党利党略で国民の理解が得られない」「比例での特定枠は新たに違憲訴訟を生むことになる」など強く批判した。

 自民案は埼玉選挙区定数を「2増」するとともに、比例で「4増」するもの。特に比例代表に「特定枠」を設け、拘束名簿式(候補の得票数に関係なく、政党があらかじめ決めた順位に従って当選者を決める方式)を一部で導入する。自民党は合区であぶれた候補を救済するのが狙いとみられる。

 日曜討論で自由党の森ゆうこ参議院会長は「投票価値の平等を図るために行う改正であるのに、比例代表に『特定枠』を入れたことで『拘束式』と『非拘束式』がごちゃ混ぜになることから『違憲訴訟』が必ず起きる。本当に止めた方が良い」と強く問題点を提起した。

 立憲民主党の蓮舫副代表も「審議時間だけみても参院で(各党会派)45分、衆院で(各党会派)15分。そこに衆院の強行採決の情報が入ってきた。私たちは希望の党とともに改正案を出したが、私たちの案は採決すらしていない。全党一致への努力をしたというが、どこでしたのか。民主主義の土台である選挙制度さえ数の力で通せるのであれば、今の政権は横暴極まりない。選挙制度を自民党のために変えるものだ」と問題視した。

 国民民主党の舟山康江参議院国会対策委員長は「比例代表の特定枠は何なのか。合区で漏れた方の救済のための特別優遇枠ではないのか。選挙前から当選確実である一方、まったく民意が反映されない。この時代に定数が増えることの説明もない」と批判した。

 日本共産党の山下芳生副委員長も「維新さん(日本維新の会)が反対するくらいだから余程悪い改正案ということ。選挙制度では投票価値の平等。多様な民意が正確に反映されることが大事で、2014年の最高裁判決は、参院は都道府県単位で定数配分しているが見直さないと一票の格差是正は難しいということで『抜本改革』を提起した。ところが自民党は、2016年は2県合区の奇策を持ち出してきた。島根・鳥取、高知・徳島の合区により出られなくなる人がいるから、今回、それを助けようと、わざわざ比例代表に特定枠を設けるという。新聞各紙も『参議院の私物化』。『(特定枠は)裏口入学』と指摘している」と問題のあることを提起した。

 日本維新の会の東徹総務会長は「6増なんてあり得ない。自民党の党利党略・私利私欲、非常識な案」と批判。「こんな案を自民党だけでやり、それを押し通そうとする。許せない。だから、参院政治倫理・選挙制度特別委員会の石井浩郎委員長(自民)に対する問責決議案を出した。それだけ許せないことということだ」と強く自民案を批判した。

 希望の党の松沢成文参議院議員団代表も「党利党略そのもの」と非難。「人口が減り、財政が厳しい中で、地方議会のほとんどが定数削減をしている。なぜ参議院だけ6も増員するのか。根拠がまったく分からない」。また「比例代表で拘束式と非拘束式をごちゃ混ぜにしている。しかも、50人いれば49人まで拘束式にできる。一人の人気者が出たことで得た票で、その人気者でなく、拘束式の1位、2位が当選していくことになる。新たな一票の格差を生むことになり、選挙制度として最悪な制度」と指摘した。

 社会民主党の福島みずほ副党首は「党利党略のための改正案だ。参議院で選挙制度の議論を積みかさねてきたが、自民党は一度も今回の案を出してこなかった。自民党は合区案を成立させながら、今回、比例代表に拘束名簿式を一部取り入れ、合区で候補にならなかった人を救済しようというもので、幅広い観点からの案ではない」と自民案に反対した。

 一方、公明党の西田実仁参議院幹事長は「我々は全国11ブロックの大選挙区制案を出したが、賛成少数で否決された。それで、付帯決議を出した。定数増でも参院全体の経費を節減すること。ペーパーレスで1億7000万円の削減は可能。公用車の見直しなど議員まわりの部分で2億7000万円。不要額を徹底して削減することで国民の負担を増やさない」などと理解を求めた。

 自民党の愛知治郎参議院議員副会長は「来年の参院選挙で1票の格差是正を図るには今国会(22日まで)で成立させることがどうしても必要。多数の議席を持つ政党として、責任を持って法案を提出した。定数を増やしたからと言って、我々の政党が利するわけではない。参議院がしっかり審議していくうえで議席数の『増』は必要だ」などと述べ、今国会で成立させる考えを鮮明にした。しかし愛知氏の説明に議席増の合理的根拠はまったく見えなかった。(編集担当:森高龍二)