太陽光「2019問題」、対策はさまざまあれども、政府の方針は見えない現状

2018年07月22日 13:18

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未だ実験段階だが、パナソニックは燃料電池エネファームとのコラボレーションに取り組む。太陽光で発電した余剰電力で水を電気分解して水素をつくり、タンクに保存。夜間など電気が必要になると水素をエネファームに供給して発電するという方式だ

 2019年問題。これは、2009年11月から開始された「余剰電力買取制度」スタートから10年が経過し、太陽光発電の電力を売電していた世帯の契約が2019年度末で、初めて終了することを意味している。つまり、太陽光発電システムで作った電力を高い単価で売電できる期間が終了してしまうのである。

 「余剰電力買取制度」とは、家庭の太陽光発電パネルで発電をし、家庭で消費しきれずに余った電力を10年間固定価格で電力会社に売電できるという制度だ。2009年のスタート時、売電価格は48円/kWhという高額なものだった。が、これは、2009年当時、太陽光発電はまだまだ普及しておらず、国には住宅用太陽光発電の普及促進という意図のもと実施された施策だった。その後、買取価格は下がり続け、現在では26〜28円/kWhまで下落し、遂に2019年に買取終了を迎える世帯が発生する。

 資源エネルギー庁によると、太陽光発電設備のある家屋は全国で40〜50万棟、そのうち2019年に買取終了を迎える太陽光発電設備は、5~6万件にのぼると見込んでおり、その後も毎年、数万件単位で買取終了を迎える世帯が出ると発表している。

 問題なのは、買取期間の終了した太陽光発電を持つ世帯が多数発生するのに、電力会社が今後どのような対応を取るのかは、いまだにわかっていないこと。噂によれば、7〜8円/kWh程度の極めて安い6分の1ほどの価格で買取を継続するという説もあるが、不透明であることに変わりはない。

 分かっていることは、買取期間終了後に安い価格で発電した電気を電力会社に売るよりも、夜間に電力会社から24円/kWh程度で電力を購入していた生活を変え、太陽光で創った電力を自家消費する世帯が増えそうだということ。

 そこで注目が集まっているのが蓄電池だ。買取期間終了後、昼間に発電した余剰電力を蓄電池に充電し、発電できない夜間の時間帯に使用することができる。加えて、災害などによる停電時の備えとしても注目されている。ただし、コストの問題が立ちはだかる。現在までのところ蓄電池の価格は、電池容量1kWhあたり15万円から20万円とされ、夜間に一般的な家庭の電気を賄うには、8kWhから10kWhが必要だとされる。そうなると価格にして100万円超は当たり前で、パワーコントロールユニットなどを含めると、200万円超となる場合も多い。

 太陽光発電住宅を1998年から積極的に展開してきた住宅メーカー、積水化学では、同社建設の約52万棟の既築物件のうち、約17万棟が太陽光発電住宅だという。そこで、積水化学では今後、既設住居へコストを抑えたリフォームで、蓄電池販売を強化するという。

 また、蓄電池として注目されているのが電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)だ。日中の余剰電力をこれら自動車に充電して夜間に使うという方法だ。また、自動車業界では寿命が車載用としては6〜8年程度と短いが、住宅用蓄電池に比較にならない大容量のEVなどのバッテリーの再利用を目論む動きもある。

 また、パナソニックは実験段階としながら、燃料電池エネファームとのコラボレーションに取り組む。これは、太陽光で発電した余剰電力で水を電気分解して水素をつくり、タンクに保存。夜間など電気が必要になると水素をエネファームに供給して発電するという方式だ。蓄電では無く“蓄水素”でエネルギーを貯めて、蓄電池とのコスト競争・寿命競争に注目が集まる方式だ。

 太陽光発電に使う太陽光パネルそのものの寿命は、20~30年と言われる。「余剰電力買取制度」が終了しても、発電そのものを続けることは可能だ。環境省は、2019年問題をきっかけに、住宅用太陽光発電設備が設置されている住宅が蓄電池や蓄電池と合わせて導入する蓄熱設備を設置する場合、設備費と工事費の一部を補助する計画があると発表している。が、確たる方針は見えない。

 目の前に迫った2019年、「2019年問題」、果たしてどんな進展となるだろうか。(編集担当:吉田恒)