生産性で問われる杉田氏の国会議員としての資質

2018年07月29日 10:39

画・労働時間の把握、企業に義務付け

自民党が杉田議員に何らアクションを起こさなかったとすれば「民主主義に極めて否定的な政権」であることを裏付けることにもなるだろう

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員(比例中国ブロック)のLGBTに対する考えに批判が相次いでいる。

 議員辞職を求める声もある。全体主義に陥った過去の歴史の反省の意味を込めて特に規定した個人の思想など「基本的人権の尊重」にかかわる問題に踏み込み、子どもを産むかどうかの自己決定権を否定し、国力の視点でLGBTを論じ「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか、彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がない」とする寄稿が月刊誌「新潮45」(8月号)に掲載されたからだ。

 杉田氏個人がどのような思想を持ち合わせようとも、個人の自由だが、国会議員であれば当然、国会議員としての資質が問われる。

 また注意を促すべき自民党の二階俊博幹事長も「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」などと、杉田氏の考えを容認。杉田氏は私人でなく公人(国会議員)だ。自民党の人権意識の希薄さが露呈される事になった。

 杉田議員の主張はT(トランスジェンダー=性同一性障害)への「性転換手術に保険がきくようにする」などの支援は考えていいことかもしなれいとする一方、L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシャル)は「性的嗜好」の話で、「子どもをつくらない」「生産性のない」カップルのために税金投入することに「国民の賛同を得られるのでしょうか」と反対の声をあげる。

 社会民主党の福島みずほ副党首は「人は生まれながらに自由・平等。(その)人間に対し『生産性』という言葉を使うこと自体、間違っている。子どもをもたない人、もてない人、すべての人に対する差別」と杉田議員の基本的認識を問題視した。

 立憲民主党の西村智奈美衆院議員は「子どもを産むか否かで差別することは憲法が尊重する基本的人権、自己決定権を否定する思想で看過できない。憲法を遵守すべき国会議員が、自ら差別との自覚をもてないまま発言したことに驚きを禁じ得ない」と指摘するが、批判されている内容を集約すれば、まさに、西村氏の指摘するところにある。

 杉田氏の寄稿文を読むと、子どもをつくらないカップルのために税金を使うのは国民の理解が得られない、と国力のために家庭を築き、子どもを産み育てることが正道のような、多様な生き方を認めない、誤った価値観が随所にみられる。

 「リベラルなメディアは『LGBT』の権利を認め、彼らを支援する動きを報道することが好きなようですが、違和感を覚えざるを得ません」「そもそも世の中は生きづらく、理不尽なもの。生きづらさを行政が解決してあげることが悪いとは言いません。行政が動くということは税金を使うということです」と子どもとつくらないから「生産性がない」と結論づける。

 杉田議員は「マスメディアが『多様性の時代だから、女性(男性)が女性(男性)を好きになっても当然』と報道することが良いことなのかどうか。不幸な人を増やすことにつながりかねません」と記し、同性愛者は不幸な人と結論づけたうえで、マスメディアは同性愛者を増やすような報道はするな、と言っているように受け取れる。

 杉田議員は「多様性を受け入れ、様々な多様性を受けいれて、様々な性的指向も認めよということになると、同性婚の容認だけにとどまらず、例えば兄弟婚を認めろ、親子婚を認めろ、それどころか、ペット婚、機械と結婚させろという声が出てくるかもしれません。現実に海外では、そういう人たちが出てきています。どんどん例外を認めてあげようとなると、歯止めが効かなくなります。LGBTを取り上げる報道はこうした傾向を助長させることにもなりかねません」と主張する。

 この主張は「共助社会・共生社会」の構築をめざすとする自民党の方針に相容れないものだ。

 自民党に「共助・共生社会」実現へ本気で取り組む考えがあるなら、当然、国会議員としての杉田議員の考えを容認したり、黙認したりできないはずだが、安倍総裁が総理在任中は党内を事実上仕切る二階幹事長が「いろんな人生観、考えがある」などと語るにとどまる。楽観的に処理できる内容ではないはずだ。

 先の衆院選で「杉田さんは素晴らしい」と評し、萩生田光一衆院議員(自民党幹事長代行)とともに自民党から立候補させたのは、安倍晋三総裁だったという話(櫻井よしこ・美しい日本の憲法をつくる会共同代表が百田尚樹・同会発起人との対談で語った)もある。

 杉田議員は改憲推進右派団体に関係しているそうだが、個々人の生き方を「生産性」で判断していくような視点は、個人が国力になるかどうか、国家にとって有用か否かで価値を決める思想につながるもの。杉田氏は「国会議員」として誤りを謝罪するか、自らの考えは改める必要はない、とするなら国会議員にふさわしくないので辞職するか、いずれかを決断すべきだろう。

 「民主主義とは多様性を認めるということ。杉田氏の発言は、多様性や民主主義に対し、極めて否定的な政権を象徴している」(国民民主党・大塚耕平共同代表)。安倍総裁率いる自民党が杉田議員に何らアクションを起こさなかったとすれば「民主主義に極めて否定的な政権」であることを裏付けることにもなるだろう。(編集担当:森高龍二)