不動産バブルが1990年代に崩壊してから徐々に不動産価格は持ち直してきたが、ここにきて不動産価格の急落を懸念する声が大きくなりつつある。地方のみならず、東京などの大都市圏でも不動産の買い手が付きにくくなってきているからだ。この傾向は日本だけにとどまらず世界にも拡大している。
これまで不動産価格の停滞は地方の問題であると思われてきた。確かに地方には所有者のわからない土地や建物が増加しつつあり、その利用価値も薄い。そうした不動産を相続する子や孫にとっては、固定資産税を支払い続けなければならない分、負の遺産でしかない。そのため相続手続きをあえて行わないという決定をする相続人もいるほどだ。しかし不動産価格の低迷は都市部にも暗い影を落としつつある。不動産経済研究所の発表した2017年上半期の首都圏の新築マンション市場動向によれば、17年4月から9月の6ヶ月間に新築されたマンションは約1万6千戸、平均価格は5993万円とバブル期ほどの高値を付けている。ところが契約率はわずか68.6パーセントと好調とは程遠い数字だ。東京23区でも価格調整が行われており、今後新築のマンションの価格急落の懸念はぬぐえない。
新築マンションだけでなく、中古マンションも状況は芳しくない。新築マンションが高値を付けたため、新築の購入を嫌った層が中古マンション市場に流れ込んでいる。ところが中古マンションの価格もある程度まで下がれば頭打ちになるのは目に見えている。実際中古マンションの新規登録の増加に対して成約件数は横ばいでこちらも供給過多になりつつある。これに加え、銀行の融資条件の厳格化、18年になってからの株価の不調も購買意欲に歯止めをかけていると考えられる。ただしこの傾向は日本のみならず、ロンドン、アメリカ、オーストラリアなど世界各国で同時に起きているものだ。
今後不動産価格の急落が起これば、19年に予定されている消費増税を前に日本経済に甚大な影響を及ぼしかねない。不動産の価格急落を防ぐため、新規マンションについても積極的に価格調整を行う企業努力が求められるだろう。それとともに不動産を所有しやすい税制の整備など官民が一体となった対策を講じることが必要なのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)