トヨタが8月に発表した2018年度第1四半期(4~6月期)の米国会計基準による連結決算で、売上高が4%増の7兆3627億円、営業利益も19%増の6826億円となる好決算となった。ライバル日産自動車の同期営業利益1091億円、前年比71.2%、と大幅減益となった決算とは対照的な数字で、好調トヨタを感じさせる。
最終的な儲けを示すトヨタの純利益も前年同期比7%プラスの6573億円と、過去最高となった。北米で増加するインセンティブ(販売奨励金)、アルミや樹脂など資材価格の上昇を原価低減や販売増で相殺した。アジアや欧州での販売増加も売上に牽引した。トヨタの4~6月期の米国販売は62万台で、全体の2割強。SUVやピックアップトラックなどの大型車も多く、大きな収益源になったという。
しかしだ、2019年3月期通期の業績予想は当初の予定どおり売上高29兆円、営業利益2兆3000億円の据え置きとし、前期比で減収減益となる見通しを示した。原因のひとつが米国の保護貿易主義だ。米トランプ政権が海外からの自動車や部品を対象に25%の追加関税を課した場合、日本からの輸出分だけでも年間約4700億円の負担増となるからだ。
また、米トランプ大統領が発動した鉄鋼・アルミニウムなどへの追加関税の影響で、通期で最大100億円程度に達する損出と予測したことも業績予想を据え置いた原因だ。米国生産に使う特殊鋼は日本から仕入れているが、品質基準の問題もあり、米国産の素材には置き換えられない。その影響はすでに出始めている。
自動車や部品に最大25%の追加関税が発動された場合、トヨタは「日本から輸出車1台当たり6000ドルの負担増につながる」とみている。トヨタの2017年の米国生産台数は126万台。日米自動車摩擦が起こった1990年代前半のおよそ倍だ。しかし、それでもなお2017年は米国に日本から約70万台、カナダから約45万台を輸出した実績がある。前述したように、25%の追加関税が発動されれば、日本からの輸出台数に限って試算しただけでも、年間で4700億円程度の負担増につながる。カナダやメキシコといった地域からの関税も引き上がれば、さらに利益が吹き飛ぶ。
米トランプ大統領は中国などに「貿易戦争」を仕掛け関税の引き上げリスクが一気に増加。トヨタにとって経営課題がまたひとつ増えたわけだ。
逆風をはね返すには、「クルマづくりの競争力、人とチームの競争力を上げていく」と決算発表で宣言したトヨタは、原価低減をさらに強化する方針を示した。トヨタは一昨年デビューのプリウスから採用している設計手法「TNGA」(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の導入拡大を進める。プラットフォームの統一を含めた、部品や設計の共通化で、背反しがちな生産効率の向上やコスト削減、商品力アップを同時に進める“石橋を叩いて”進む経営手法を貫く。
トヨタは東京オリンピックが開催となる2020年までに新型車の約半数をTNGAに対応したモデルとする計画を掲げる。全社で聖域のない原価低減を推し進める。改革に残された時間は2年程度、「それほど猶予はない」というのがトヨタの見解だ。(編集担当:吉田恒)