深刻な少子高齢化と、それに伴う生産年齢人口の減少に直面している日本にとって、労働環境の改善は、一企業の問題ではなく国全体に関わる課題といえるだろう。
2016年9月に内閣官房に「働き方改革実現推進室」が設置されたことで「働き方改革」という言葉の認知が一気に拡がったが、2年経った今、実際に働き方改革は進んでいるのだろうか。
そもそも働き方改革とは、50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる「一億総活躍社会」を目指して政府が掲げたもので、労働環境の改善だけでなく、労働者の能力を存分に発揮できる環境づくりや就業機会の拡大、さらには投資やイノベーションによる生産性の向上にまで及ぶ。また、育児や介護との両立なども大きな課題だ。
一口に「働き方改革」といっても、業種や業態、企業によって、その取り組み方は様々だ。それぞれの企業が、自社の現状での問題点や未来のビジョンをもとに労働環境の改善に取り組んでいる。
例えば、製薬会社のアステラス製薬は、女性の職域拡大や女性経営基幹職の増大など、女性活躍を推進する「WINDプロジェクト」の取り組みで知られているが、その他にも、研究職や開発職を対象に専門業務型裁量労働制を取り入れたり、勤続年数や年齢にかかわらず仕事の付加価値や難易度で判断する給与制度を導入するなど、社員の意欲向上と、能力を認めやすい職場づくりを進めている。
また、お菓子や食品の製造販売のカルビーでは、IT化によって対面で仕事をする必要性が減ってきたことなどから、在宅勤務を導入。その結果、業務の効率がアップする傾向が見受けられたり、残業時間の申請が2時間近く削減されるなどの効果がみられたという。
「働き方改革」といえば、残業時間の短縮や休暇制度の見直しなどに取り組む企業が多いが、業種によっては、長期休暇がとりにくいものも多い。住宅系の企業などはその代表ともいえるだろう。ところが、その住宅業界で異例ともいえる長期休暇を実現している企業もある。
木造注文住宅を手掛けるアキュラホームでは、2016年度より全社員を対象に、年末年始や夏季休暇とは別に9日間の連続休暇を取得することを推進しており、同年には例年の2.6倍にあたる75.5%の社員が連休を取得。そのうちの約半数の社員が「9 連休」を取得している。これを実現するためには、社員個人だけではなく、早期から予定を立てて同じ部署内で情報共有し、チーム力を強化する必要がある。実際、同社ではこの制度を導入して以来、部署やチームの結束力の強化を社員自身が実感しているようだ。
「働き方改革」への取り組みは、企業の理念や経営姿勢を窺う上でも参考になる。それを知ることは、現在勤めている社員はもちろん、就職や転職の際にも大いに役立つのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)