防衛大綱見直しへ 安保防衛懇で議論始まる

2018年08月30日 10:13

 三村明夫新日鉄住金名誉会長を座長とする政府の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」の初会合が29日、総理官邸で開かれた。懇談会は総理が開催する。防衛政策の基本方針を示す防衛大綱の年内見直しに向けた政府全体での議論が本格化する。

 防衛大綱見直しに関して安倍晋三総理は冒頭「私は総理就任以来、安保政策の立て直しを進めてきた」と語り「サイバー空間や宇宙空間など、新たな領域で優位性を保つことが我が国の防衛に死活的に重要になっている。従来の延長線上ではなく、真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていく必要がある」と大綱見直しの必要についての考えを伝えた。

 懇談会会長の三村氏は防衛省所管の財団法人世界平和研究所副会長で、研究所の会長は中曽根康弘元総理。同研究所は2005年に憲法改正試案を発表。憲法9条に関しては「自衛のための防衛軍の保有を定める」としているほか「国防、テロ、大規模自然災害等の緊急事態に対応し、一時的に憲法が保障する自由及び権利を制限する緊急措置をとる権限を内閣総理大臣に与える」などとする内容を盛り込むなど、いかなる状況下でも尊重されなければならない「基本的人権」に対する姿勢に懸念のある内容だった。

 また、2006年に発表した同研究所の「21世紀の日本の国家像」については「我が国のアイデンティティの再構築と我が国らしさの発信」「家庭、地域、社会における共同社会の理念の構築」「総理直轄の国家情報局新設」などを提言していた法人だ。思想的に安倍総理に近い人物をいえそう。懇談会の座長は総理が依頼した。

 懇談会メンバーは座長を含め9人。前統合幕僚長の岩崎茂ANAホールディングス常勤顧問、元防衛事務次官の黒江哲郎三井住友海上火災保険顧問・国家安全保障参与らが入っている。(編集担当:森高龍二)