日露関係、次回首脳会談で新たな段階へ動けるか

2018年09月16日 11:56

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安倍晋三総理は14日の日本記者クラブ主催自民党総裁選挙討論会で「(プーチン大統領の)様々な言葉からサインを受け取らなければならない」とした

 ロシアのプーチン大統領が「前提条件を付けず、年内に安全保障条約を締結しよう」と12日の東方フォーラム全体会合で提案した。10日の日露首脳会談では提案しなかった。日本の経済協力を一層引き出すために速断した可能性が高い。

 安倍晋三総理は14日の日本記者クラブ主催自民党総裁選挙討論会で「(プーチン大統領の)様々な言葉からサインを受け取らなければならない」とした。

 また「平和条約締結への意欲が示されたことは事実であり、11月、12月の首脳会談は重要な会談になる」と日露が次の段階へ動く期待感を持たせた。

 記者団が、期待を持たせる言い方は国民に無責任に思うと投げかけると、安倍総理は「北方4島はロシアが実効支配している。意欲を示さないと動かない」と自身の任期中に4島帰属問題を解決する意欲を示すことが重要だとした。

 プーチン大統領は21回も安倍総理と会談してきた。今回で22回目だ。プーチン大統領が領土問題を確定し平和条約を結ぶという日本政府の立場を理解していないわけがない。百も承知の上で、10日に言わなかったことを12日の公の場で提案したのだ。一層の経済協力を引き出したい思いが浮かび上がる。

 安倍総理は14日「日本は領土問題を解決し平和条約をやろうという立場、大統領の反応については交渉途中なので申し上げられない」と公にしなかった。安倍総理は交渉にあたり「1955年からの交渉記録、秘密文書も読んできた、ほとんど表に出ていない(文書)」としたうえで、これまでの経緯を踏まえ、交渉に臨んでいることを強調。

 ただ12日に安倍総理が東方経済フォーラム全体会合で行った演説は日露安全保障条約締結時の地域の平和と経済波及効果の大きさ、重要さをかなり強調するものだった。条約締結後の効果を強調することで4島帰属問題を解決するテーブルにロシアを誘導する狙いがあったようだ。

 しかし、プーチン大統領は時間がかかる4島帰属問題は後に交渉に応じるとにおわせ、条約締結を年内にと速断提案したように思われる。

 安倍総理の演説は「ロシアと日本が力を合わせる時、ロシアの人々は健康になる。ロシアの都市は快適になる。ロシアの中小企業はぐっと効率を良くする。ロシアの地下資源は日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届く。ここウラジオストクを始め、極東各地は日露の協力によって、ヒト、モノ、資金が集まるゲートウェーになる。デジタル・ロシアの夢は、なお一層、早く果実を結ぶ」とアピールした。

 そのうえで「その十二分な開花を阻む障害が依然として残存している」とし、その障害こそ「両国がいまだに平和条約締結に至っていないという事実にほかならない」と結論した。

 安倍総理は「日本とロシアに永続的な安定が生まれたあかつきには北半球と東半球の一角に平和の柱を打ち立てている。それは頼もしくも地域と世界を支える太い柱となっているはず」とも訴え「北極海からベーリング海、北太平洋、日本海は平和と繁栄の海の幹線道路になるだろう。対立の原因をなした島々は物流の拠点として明るい可能性を見いだし、日露協力の象徴へと転化するだろう、日本海も恐らく物流のハイウェイとして一変しているだろう。その先には、中国、韓国、モンゴル、インド・太平洋の国へとつながる、大きくて自由で公正なルールに支配された、平和と繁栄、ダイナミズムに満ちた地域が登場する」と語った。

 そして安倍総理は「今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか、と問いながら歩んでいきましょう」とプーチン大統領に呼び掛けた。「前提条件なしに年内に平和条約を締結しよう」という提案は安倍総理の演説を受けたものだ。

 安倍総理は4島帰属問題の解決に時間がかかるということを「これからも機会をとらえて、幾度となく(日露首脳)会談を続けていきます。平和条約締結に向かう私たちの歩みを、どうか皆さん、ご支援頂きたい」と演説したことからもわかる。今回のプーチン大統領の提案で次の日露首脳会談がどのような内容になるのか。これまでに増して「重要な会談になる」(安倍総理)。結果を注視したい。

 今回のプーチン大統領の提案に反論も異論も唱えなかったことに野党からは「重大な外交的失態」との指摘が出ている。失態だったかどうかも、次回の首脳会談で明らかになりそうだ。(編集担当:森高龍二)