画期的で将来性ある情報銀行、安全性の担保が課題

2018年10月02日 06:07

画・画期的で将来性ある情報銀行、安全性の担保が課題

お金ではなく個人情報を預かって企業に提供する「情報銀行」が来年4月に設立される。すでに複数の大手企業が参入を決め、画期的でポテンシャルの高いビジネスだが、課題は成長産業として引き上げるため、安全性をしっかり担保することだ。

お金ではなく個人情報を預かって企業に提供する、いわゆる「情報銀行」が誕生しようとしている。消費者からデータの預託を受けた後、契約に基づいて利用企業に提供するしくみで、NIPPON Platformが来年4月に設立。サービス開始はまだ先だが、すでに銀行や電機など複数の大手企業が参入を決め、準備や実証実験を進めている。

三菱UFJ銀行は社員1千人を動員して独自の実証実験を行い、日立製作所も日本郵便と組んで実験を開始、電通は子会社を使ってサービスを行う予定であることを示した。取り扱う個人データは、消費者の購買履歴や家計収支、健康情報など、業種によって様々。ビジネスとしてのポテンシャルは高く、今後、市場の発展に伴い扱われる情報が増えていく可能性もある。

 情報銀行が誕生するメリットは、企業側としては、自社だけで入手できない情報が取得できることで、商品やサービスの質向上に繋げられるという面がある。またデータによっては消費行動の予測も可能になり、個人の需要に合わせたサービス提供ができる利点もある。

 一方、消費者のメリットは、個人情報を提供する代わりにお金が受け取れること、また企業が受け取った情報を基にサービスの向上に努めた結果、これまでよりも期待値を超える質の高いサービスが受けられるようになることだ。

 問題は、情報銀行を成長産業として引き上げるため、安全性をしっかり担保することである。

 ビジネスの成長性については、三菱UFJ信託銀行の担当者による「データ利用企業は順番待ちの大行列だ」という心強いコメントがある。そしてこのコメントを裏付けるように、実際に保険会社や家電メーカーなど様々な企業が名乗りを上げているのは確かで、市場拡大に向けたベクトルが働いているのも間違いない。

 後は安全性の確保だが、こちらは総務省と経済産業省が有識者会議を開いて情報銀行の安全活用について議論し、すでに今年の6月に指針をまとめている、企業に対してフリーパスで参入を認めるのではなく、財務、経営状況、ガバナンス、セキュリティー体制などをチェックし、要件を満たした場合にのみ参入を認める。

 情報銀行という画期的でポテンシャルの高いビジネスが、消費者保護と情報管理の安全性を確保したうえで成長産業になれるかどうか、今後の動きに注目したい。(編集担当:久保田雄城)