中小企業の知的財産権が侵害されていないかどうかをめぐり、公正取引委員会がいわゆる「下請けいじめ」の調査に乗り出す。これまで中小企業が開発した新たな技術やサービスが不当な価格で大企業に提供されてきたこともあり、大企業に是正を促す声が高まりそうだ。
知的財産は中小企業にとって非常に大きな財産だ。中小企業の中で不動産や動産などの財産を大企業よりも持っているというところは少ないが、知的財産に関してはそうではない。大企業をもしのぐ商品や技術を開発してきた中小企業は数多いのだ。そうした知的財産を上手に活用して、無形資産を財産化したり取引相手に対して主導権を握るということもできる。いわば知的財産は中小企業の武器ともいえるものだ。
しかしこれまで多くの中小企業はいわゆる「下請けいじめ」に遭ってきた。つまり大企業が取引の際に優位な立場を利用して特許を取った技術を安く提供させたり、ノウハウの詰まった図面などを渡させたりするケースがあったのだ。中小企業としては取引をこれからも続けていくため大企業の要求通りにすることが多い。こうした行為が独占禁止法に抵触する恐れがあるため公正取引委員会が調査を始めることとなったのだ。
中小企業は特許の出願という点でもなおざりにされている。積極的に特許申請を行っている企業や大企業で約半数だったのに対し、中小企業ではわずか20%と少ない。中には特許申請によって情報が流出するという懸念を持っている中小企業もあるが、実際には特許申請せずにいると下請けいじめに遭って技術や商品を守ることができないことも珍しくないのだ。もし知的財産権を軽視してしまうなら、中小企業の力は弱まり日本の経済に重大な影響が出ることも否定できない。これからも元気な中小企業を支えていくために、知的財産の価値の周知や特許出願の促進、知的財産に強い弁護士の紹介などの啓発活動を行っていく必要があるだろう。(編集担当:久保田雄城)