今上天皇が2019年4月30日に退位なさることに伴い、翌5月1日には新元号へと改元されることになる。もし実現すれば1817年5月7日に退位した光格天皇以来、実に6代ぶりの天皇退位となる。歴史的に重要な意味を持つ出来事だが、新元号への改元をビジネスチャンスととらえている人も少なくない。それが「平成」の商標登録だ。
もし「平成」を商標登録することができれば、他社が商標登録と同じ、もしくは似た商標を使用できなくなる。さらに商標登録は知的財産権であるため、有効活用すれば大きな利益を上げることが可能だ。ただし商標法3条1項6号の規定に基づき、特許庁は現元号は商標登録できないとの判断をしている。ただしこれは現元号に限られており、19年5月に新元号へ改元されれば「平成」の商標登録が可能となる。もちろん今でも「平成」を冠した企業は現在でも多く存在するが、他社が商標登録して権利を主張しなければ問題にはならない。しかし実際に商標登録する企業が表れれば状況は一変する
もし「平成」が商標登録できることになれば、それを利用した商標ビジネスが横行することが懸念されるのだ。ある企業が「平成」を商標登録した場合、その後「平成」を会社名などに使用したい企業に対し権利を売ることができる。「平成」に限らず現在でも商標ビジネスは横行しているが、新元号への改元によってその傾向が加速する可能性があるのだ。商標登録はそもそも企業が商標権を侵害することなく安定した経営を行うためのものだ。商標登録の趣旨とは全く異なる方法で商標権が用いられる危険が高まっている。
「平成」の商標登録の問題は決して他人事ではない。ある業種と無関係な企業が「平成」を商標登録していた場合取り消しを求めることはできるが、数年間は裁判で争わなければならない。結果として商機を逃してしまったり、海外進出の機会を逸してしまったりする可能性があるのだ。新元号への改元は歴史的なイベントではあるが、その裏で進行してくる商標ビジネスへの警戒も必要だ。(編集担当:久保田雄城)