厚生労働省は複数の病院の医療を遠隔で支援する仕組みづくりを始める方向で検討に入った。特に集中治療室など、より専門的な医師の意見が必要な場面で導入が検討される模様だ。より質の高い医療を提供し、患者の福祉向上、さらには国民医療費の抑制に期待がかかる。
集中治療室で行われる医療は重い症状の病気や命にかかわる怪我への特別な治療などが大部分を占める。特に多いのは体の損傷が大きい、薬物やアルコール、アナフィラキシーなどの影響でショックを受けている、出血がひどいなどの症状を示す患者だ。多くの病院には集中治療室が設置されているが、すべての症状に通じた専門医がいるわけではないため、瞬時にすべての患者に適切な治療が施せるはずはない。しかし集中治療室で行われる医療が一刻を争うものであることを考えると、遠隔診療に期待がかかるのも無理はないだろう。
遠隔診療を利用すれば、その地域の中核となる病院と複数の集中治療室をネットワークでつなぎ、集中治療室内の医師や看護師が中核病院にいる専門医からのアドバイスが受けられることになる。さらに電子カルテやバイタルサインの情報を専門医に送って、適切な処置・治療について尋ねることも可能だ。こうして患者の症状に合わせてより適切な治療がより早く行える可能性が高まるだろう。実際遠隔診療を早々と導入した米国では在院日数の減少が見られている。国民医療費が年々上昇している国内の状況を考えると、厚生労働省が本腰を入れて導入を検討すべき時期に来ていると言えるだろう。
ただし、遠隔診療には課題も残っている。もし遠隔診療が幅広く導入されれば、集中治療室内のような緊急でない医療に対しても遠隔診療を用いようとする病院が出てくるかもしれない。これは逆に医療の質を低下させ、患者の不利益になることは間違いない。今後は遠隔診療を利用するためのより具体的なガイドラインの策定や、利用状況の監督などが必要になるだろう。(編集担当:久保田雄城)