保育士資格者7割が「保育士として働いていない」。6割が保育士業務希望

2018年10月18日 06:38

画・働く主婦の実感、働きやすくなった28%、仕事の自由度向上した33%

野村総研が保育士としての就労状況や就労意向に関するアンケート調査を実施。保育士資格保有者のうち保育士として就労中は33%。67.1%が潜在保育士

 保育施設の不足が問題化している。政府の統計では、保育施設の数は幼稚園連携型等を含む保育所等において増加傾向である。一方、景気回復や人手不足を背景に子育て中の女性の就労率は高まっており、都市部を中心に保育施設への需要は増加傾向で、結果として2017年までの待機児童は増加傾向を維持している。

 保育施設の量が需要に追い付かない原因には様々なものがあるが、全産業において人手不足感が高まっている中、保育士の不足も深刻化しているとされる。

 野村総合研究所が全国の保育士資格を持つ女性7210人に対して保育士としての就労状況や就労意向に関する調査を実施、今月2日にその集計結果を公表している。

 調査結果によれば、保育士資格を有する者の32.9%が現在保育士として就労していると答えており、29.5%は保育士以外の職種で就労し、37.6%が非就労という結果であった。逆に見ると保育士資格を持つ者の約7割、3人に2人の67.1%が保育士として就労しておらず、そのうち半数以上の56.1%は未就労である。これは保育士として就労しうる潜在保育士が多いことを意味する。

 資格を持ちながら保育士として就労していない潜在保育士に保育士としての就労意向について聞いたところ、「今後保育士として働いてみたい」と回答した者の割合は60.5%にものぼり、「今もこの先も保育士として働きたいとは思わない」と回答した者は20.3%にとどまった。多くの潜在保育士が保育士就労の意向を持ちながら現実には保育士として就労しない何らか障壁が存在することになる。

 保育士不足の議論では一般に保育士の報酬の低さが議論の的になるが、潜在保育士に保育士として働き始める上で重視する点を聞いたところ「給与・賞与や手当など金銭的報酬が高いこと」以外を最も重視すると回答した者は64.9%となっており、この調査結果では必ずしも報酬の低さが就労忌避の主要な要因ではないようだ。

 「金銭以外」を重視すると答えた者の54.2%は「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方で働き始められること」を最も重視していると答えており、具体的には「1日あたり短い時間から働けること」22.3%、「土日祝日が完全に休みであること」16.8%などが多くなっている。

 レポートは「保育士の就業形態の多様化と、働き方の多様な保育士を活用できる保育現場のあり方について、検討が望まれる」と結んでいる。(編集担当:久保田雄城)