世界自動車需要は早期に縮む、発端は中国の新車販売減。背景にトランプ保護主義

2018年10月28日 13:56

China_Car Sales-VS_USA

トランプ米大統領が進める米中貿易戦争で、中国自動車市場が大きく停滞するなかで、唯一販売を伸ばすレクサス車

 米トランプ政権が推し進める対中貿易戦争が中国での新車販売に大きな影響を与え始めている。中国汽車工業協会の発表によると、9月の中国の新車販売台数は、前年同月比マイナス11.7%と大きく前年実績を割り込み、販売台数は235万6200台だった。前年同月実績台数を下回るのは、これで3カ月連続。このまま年末まで前年実績を割り込むマイナス傾向が続けば、2018年暦年でも前年実績を下回る可能性が出てきた。世界最大の自動車市場、中国マーケットの変調は世界自動車大手の経営戦略にも影響を与えそうだ。

 単月の販売台数が前年同月比2ケタ減となったのは、少なくとも中国が世界最大自動車市場となった2009年以来初めての事態だ。このところ中国自動車市場を牽引してきた地方都市でも販売が低迷したからだ。

 ブランド別ではやはり米自動車大手の販売の落ち込みが目立つ。単月の販売台数を公表していない米ゼネラルモーターズ(GM)の7~9月の販売台数は14.9%減と低迷し、米フォード・モーターの9月の販売台数は42.8%減と大幅なマイナスだ。米中貿易戦争の影響などで顧客の米ブランド車を敬遠する動きが広がっているとみられる。米国ブランド車の失速は顕著だ。が、一方でGMと中国販売1位を競う独フォルクスワーゲン(VW)も10.5%減と落ち込んだ。

 これは、米トランプ政権との貿易戦争と言われる摩擦が激化する過程で、米国への対抗処置として中国は7月から輸入車への関税を大きく変えたことによる結果と言える。中国は輸入乗用車への関税を25%から15%に引き下げた。しかし一方で、米国からの輸入車だけは40%に引き上げている。

 中国の関税見直しが追い風になったのがトヨタだ。同社は中国で販売するレクサスブランド車の全量を日本から輸出する。関税引き下げに応じて7月にレクサス車を平均6.6%値下げし、他社と比べ割安感が強まったことで、トヨタ車全体で9月は17.7%増となった。しかし、トヨタ以外の日系メーカーは苦戦している。ホンダの9月の販売台数は前年同月比6.0%減で8カ月連続のマイナスになった。マツダも同25%減と5カ月連続で減少した。日産も0.8%減、また、三菱自も4.5%減で7カ月ぶりにマイナスとなった。

 イギリスの調査会社IHSマークイットによると、中国の新車市場は2018~2025年まで年平均2.6%増となり、2011~2017年の8%増から急減すると2018年初に予測していた。中国は世界最大自動車市場に躍り出たものの、都市部の市場飽和や地方経済の停滞でブレーキがかかるとしていた。

 しかし、今回の米中貿易戦争で早期に中国自動車市場が停滞する可能性が出てきた。このまま保護主義を推し進めると、成長を前提としてきた世界の自動車産業は、早期に不透明な時代に入る。米トランプ政権の保護主義が世界の自動車業界に暗雲をもたらす。(編集担当:吉田恒)