後継者不足の企業救済 情報を外資に公開へ

2018年11月02日 06:22

画・後継者不足の企業救済 情報を外資に公開へ

経済産業省は中小企業のM&A情報を外資系企業に開放することを決めた。中小企業を外資系企業が支える日も遠くないのかもしれない

 中小企業で深刻化する後継者不足を改善しようと、経済産業省は中小企業のM&A情報を外資系企業に開放することを決めた。日本経済をさせる中小企業が廃業するのを防ぎ、高品質の製品や技術を守るとともに雇用も確保するのが狙いだ。

 中小企業の多くは倒産や廃業の危機に瀕している。経済産業省の分析によれば、国内で約127万社の中小企業が後継者不足に陥っているのだ。その大きな理由は中小企業経営者の高齢化だ。今後10年間だけを見ても経営者が70歳を超える中小企業のうち後継者が決まっているのはわずか半数にすぎない。経営者の年齢が80歳となるとその割合はさらに下がり、株式会社帝国データバンクが2017年に発表した「後継者問題に関する企業の実態調査」によればなんと34.2%だ。つまり3分の2の中小企業で後継者がいないということになる。業種も建設業、製造業、小売業、サービス業などで後継者の不在率が16年の同様の調査を上回った。後継者不足の深刻さが認識されてからも、対策を講じられていない中小企業が多いのが現状だ。こうした状況では黒字企業や世界に誇る技術を持つ中小企業も、後継者がいないという理由だけで廃業に追い込まれる恐れがある。

 経済産業省はこうした事態を憂慮し、中小企業基盤整備機構が持つ引継ぎ支援センターのデータベースを外資系企業に公開することを決定した。日本国内の中小企業が持つ製品や技術に興味のある外資系企業は日本貿易振興機構を通じて情報を得ることができる。データベースには中小企業側からの売却案なども記されているため、外資系企業としても予算に見合った買収ができるシステムだ。

 かつては外資系企業からの買収というと安く買いたたかれる、技術が流出するなどの懸念を持つ経営者も多かった。しかし今回のケースでは中小企業基盤整備機構が関与することで技術の流出を防ぎ、データベースの中から公開する企業の件数もコントロールできるようになっている。後継者不足解消のための政策が必要なのは言うまでもないが、中小企業を外資系企業が支える日も遠くないのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)