中小企業で後継者不足に悩むところが増えている。後を継ぐ人材がいなければその企業は事業を存続させることができず、廃業になるところも少なくない。いかに後継者を確保するか、その対策は日本経済全体の問題といえるだろう。
高齢化社会といわれる日本において各方面で様々な影響が出始めている。中小企業の後継者不足もそんな影響のひとつだろう。経営者の高齢化が進んでいるものの、自身の経営する企業を継いでくれる人材がいない、こうした後継者不足は企業全体のおよそ3分の2にも及ぶといわれている。中小企業には資金繰りなど様々な悩みがあるものだが、中でも特に深刻な問題となっているのが後継者不足である。
中小企業の後継者不足の原因のひとつが冒頭で説明したように経営者の高齢化である。しかし、後継者不足となる背景にはただ単に社長が高齢だという理由だけではない。これまで、中小企業では、経営者の子供がそのまま後継者となる場合が多かったのだが、事業の後を継ぐという選択をしないケースも増えているという。社会情勢の変化によるライフスタイルの多様化に伴い、会社を継ぐべき立場にいる人が後を継がないという選択をしている、ということだろう。また、それに加えて少子化も関係している。経営者自身に子供がいないというケースも珍しいことではなく、このような場合ともなれば、子供に継がせるという選択肢すら考えることができない。
このような後継者不足に陥った中小企業の選ぶ道にはどのようなものがあるのだろうか。継ぐべき人がいないのであれば事業を継続することは難しいため、廃業という選択を考える経営者も多い。中には黒字決算で健全な経営を続けていながらも後を継ぐ人がいないという理由から廃業するケースもあるという。廃業をせずに第三者に事業を譲渡するという選択肢もあるが、この場合にはすぐに買い手がつかない可能性もある。いずれにしても単純な問題で片付けることができないといえるだろう。
後継者不足という理由だけで企業が廃業してしまうというのは、経済という観点から考えても決して良いことではない。廃業する企業が増えれば競争力の低下につながり、経済そのものが先細っていくからだ。そこで最近では地方自治体が中心となって後継者不足に悩む経営者の支援に乗り出しているケースも増えてきた。中小企業の中には、後継者を他の企業からヘッドハンティングしてくるといった対策をとるところもある。このような対応策をとることは後継者不足という現状を打破する意味で非常に有効であるといえるだろう。
大切なことは、経営者が事業の継続について経営者がいかに明確なビジョンを持てるか、ということである。後継者不足というのはどの企業であっても決して他人事ではないのだ。(編集担当:久保田雄城)