今後国内では高齢化が進み数百万世帯規模で相続が発生する「大相続時代」が到来するとされているが、多様化する家族の形に法律が追い付いていないことが指摘されている。思いもかけない親族が相続人になったり、逆に資産を残したいと思っている人が相続人ではなかったりすることが起こり得るのだ。自分の資産を自分の理想通りに分配するためにも、早めの検討が重要になる。
よく知られている点だが、法的に結婚している夫婦の場合、どちらかが亡くなれば配偶者は常に相続人となる。まず配偶者が財産の半分を相続し、その後第一順位となる直系卑属の子がいれば子が分配することになる。子がいない場合には第二順位として直系尊属の被相続人の両親、第三順位の兄弟姉妹の順に相続が行われる。しかし離婚している場合元配偶者は相続人とはならない。ここまでは容易に理解できるが、事実婚であっても民法上の法定相続人とはならない。相続人は戸籍上の血縁関係によって決められるからだ。内縁の妻や夫に相続財産を残す場合には配偶者の税額軽減の利用はできず、法定相続人としての基礎控除も受けられない。
では妻以外の女性との間にできた非嫡出子の場合はどうか。これまで非嫡出子は嫡出子の半分しか財産を相続できなかったが、現在では被相続人の子どもは平等に相続が行われるように法改正がなされた。しかし親が再婚した場合の連れ子は養子縁組をしない限りは相続人としては認められない。こうした点を理解しておかないと、自分が望む形で遺産が分配されないことになるだろう。加えて遺留分は遺言でも侵害できないため、遺言書を作成する時にはできるだけ早く専門家に相談するとともに遺留分にも配慮しているかどうかを気に掛けるべきだ。
家族の形が多様化するにしたがって誰が相続人になるかも大きく変化している。しかし近年急速に認められつつあるLGBT同士の結婚や相続の権利など、家族の多様化に法整備が追い付いていないのが現状だ。今後すべての人が思い通りに遺産を分配できるような法整備が期待される。(編集担当:久保田雄城)