現在、日本経済は政府の基調判断によると回復局面とされ、いわゆる景気が良い状態だ。実際、各種統計を見ると良好な数値を示している。中でも有効求人倍率は直近の2018年11月の数字で1.63倍と1970年代なみの高い水準を維持し続けている。もはや日本は深刻な人手不足の状態にあるというのは常識だ。しかし、細かに業種別の数字を見ると業種、職種によってバラツキもみられる。
日本全体としては景気が良いのであるからリストラを行う企業も減っている。リストラとは本来は人員削減を示す言葉ではなく事業の再編成を意味する言葉だが、日本では人員削減を表す言葉として定着している。日本で人員削減をする場合、解雇という手続きはなかなか難しい。そこで日本企業の多くはいわゆるリストラを早期退職者の募集という形で行う場合が多い。
15日、東京商工リサーチが2018年の「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」の調査結果を公表している。調査結果を見ると予想どおりリストラ企業の数は減っているようだ。
2018年中に「希望・早期退職者募集」を行った主な上場企業の数は12社で、前年の25社から半減し、00年以降で最少だった16年の18社をさらに下回り史上最少を更新した。近年のリストラは主にリーマンショックの影響によるもので、ショック直後の09年には191社までに達したが、その後円安等の影響を受け業績が好転し、13年から減少傾向で推移してきた。
募集人数が100人以上の企業は6社で、業種別では医薬品と情報・通信が各3社と多くなっており業種によって偏りがあるようだ。レポートでは電気機器、医薬品、小売業での実施が目立つとしている。応募人数が最も多かったのは日本電気グループの2170人で、これは固定費削減等の抜本的な収益構造改革として実施されたとされる。 レポートでは「人手不足は深刻化しているが、厳しい経営環境に置かれている上場企業が少なくない」としている。
有効求人倍率と同様にリストラ状況でも業種ごとに大きなバラツキがあるようだ。これは求人倍率やリストラのみでなく様々な統計で言えることだが、現在日本産業では急速なテクノロジーの変化や人口構造の変化、グローバル化等を背景に産業構造、就業構造の大きな変化が起きている。こうしたマクロの変化の中で、好景気で人手不足の状態でありながら固定費圧縮のためにリストラを実行する企業も少なくないようだ。勤労者にとっても厳しい時代だと言える。(編集担当:久保田雄城)