現在、日本は景気拡張の局面にあり、特に設備投資動向が堅調だ。中でもIT関連投資が順調でGDPを押し上げる一つの要因になっている。2011年の大震災以降、企業はセキュリティー強化のためのIT投資計画を強化したが、さらにマイナンバー関連も相まってIT投資ブームとも言えるような景気回復局面となった。
投資計画から判断すると、このブームは16年には一巡すると見られていたが現実にはそうはならなかった。16年以降もIT投資は堅調で、その背景にはクラウド化を考慮したサーバー仮想化やWindows10への移行、その他SaaS(サービスとしてのソフト)化への投資が順調であるためと見られている。現在ではマイクロソフト社のWindows10を代表にソフトウエアは製品ではなく継続的なサービスであるというコンセプトが主流となりつつある。企業もこうした状況の変化に応えるためにIT投資を持続する必要がある。
こうした動向に関し、矢野経済研究所が国内の民間企業を対象として昨年下半期時点での「ERP及びCRM・SFAのクラウド利用率」の調査を実施、23日その結果を公表している。
有効回答528社のうち、ERP(財務・会計、人事・給与、販売・生産管理等の基幹系)の導入については、財務・会計システムが495社、人事・給与システム導入は483社。このうちSaaSを利用している比率は、財務・会計で2.8%、人事・給与5.0%であった。ERPは概ね横ばいで推移、SaaS利用率は短期的に大きく伸びる傾向はみられず、長期的に緩やかな増加と見込まれる。この背景にはSaaSよりシステム基盤にクラウド(IaaS/PaaS)の利用が先行して拡大している現況があるようだ。
CRM(顧客管理)・SFA(販促力自動化)を導入している企業は132社でSaaSの利用率は28.0%、この分野ではSaaS利用率が順調に上昇している。今後のシステム導入・更新計画においてSaaS導入を予定している企業の割合は、財務・会計システムで9.1%、人事・給与システムが9.0%、販売管理で4.1%と全体としては約1割程度で決して多くはないが、レポートでは「今後システム更新のタイミングではSaaSが検討される機会は増えるであろう」と見込んでいる。
企業により業務モデルは多様であるためSaaSの提供が難しい分野もあるが「ベンダーから提供されるSaaSの種類も最近徐々に増えてきており、長期的には緩やかに上昇していくと見込む」とレポートはまとめている。(編集担当:久保田雄城)