自衛隊員募集協力。自治体が住民基本台帳から18歳、22歳の氏名、住所、性別、生年月日といった個人情報を防衛大臣の求めに応じ「資料」として提供している問題。
京都市はこれまで住民基本台帳の閲覧のみとしてきたが「自衛隊の依頼を受け」来年度に18歳、22歳になる市民約2万8000人の個人情報を「紙媒体で知らせる」。
自衛隊京都地方協力本部が提供する宛名シールに募集対象者の住所・氏名を印字し、提供すると20日、市のHPで告知した。
同時に提供してほしくないという対象者から「市個人情報保護条例に基づく『個人情報の利用停止請求』が行われた場合、請求者の個人情報については自衛隊へ提供する宛名シールから除外する」と赤字注釈で知らせた。
隊員募集協力で紙媒体や電子媒体で提供している自治体はもちろん、閲覧のみ認めている自治体も、協力するなら個人が情報提供を拒否できる仕組みを作っておくことが良い。京都市のやり方はひとつの方策だ。
自衛隊員募集に対する自治体の協力について、防衛省は自衛隊法第97条(市町村の法定受託事務)や自衛隊法施行令120条(募集に関し必要があると認めるときは都道府県知事や市町村長に必要な報告や資料の提出を求めることができるとの規定)を根拠に紙媒体や電子媒体での名簿提供を求めている。
しかし専門家の中には法令にいう「資料」に「個人情報は含まれない」とする意見があるほか、防衛大臣の要請に対し自治体が応じなければならない「義務規定もない」。協力するかどうかは自治体の判断でできる。
京都市は自衛隊員募集のために本人の同意なく個人情報を提供することは市個人情報保護条例違反にはならないとの判断を示している。市としては「提供できる」と判断しながらも結果的に請求者の意思に沿うよう、情報提供対象から除外することにしているので、結果的にプライバシー保護になっている。市は理由に「入隊意思のない人の情報を提供しても自衛官の人手不足解消につながらない」とする。
ただ請求手続きに役所窓口へ行かなければならないのは改善すべき。対象者が18歳、22歳であれば電話やインターネット、郵送での受け付けも可とするなど、個人が簡単に意思表示できる仕組みにすべきだろう。また、こうした対応をしますということは市の広報や地元新聞の地域版を利用するなどして周知させることも必要だろう。
今回、紙媒体に切り替えたことを契機に、知らない間に住民基本台帳から個人情報が提供されていたことを新たに知った人も多いと思われる。
紙媒体や電子媒体で情報提供している自治体は京都市のように、該当する個人から情報提供しないでほしい、との意思表示がある場合には、その請求者の情報は提供しない措置をとっていくべきだ。
違法なケースは言うまでもないが、合法でも憲法の保障するプライバシーに対する権利の重みに軸足を置くこと、本人の同意なく情報提供することに、より慎重に対応することが期待される。(編集担当:森高龍二)