高齢化率トップの日本から、認知症予防に新しい希望。世界も注目するミツバチの力

2019年03月15日 19:18

画・認知症の継続介護。介護者自身の精神状態維持に不安、6割超。

今、世界中の先進国で高齢化が深刻な問題となっている

 今、世界中の先進国で高齢化が深刻な問題となっている。中でも日本の高齢化は、アジアの中では群を抜いて高い水準となっており、欧米諸国と比べても、2005年以降はドイツやスウェーデンなどを追い越して、世界で最も高齢化の進んだ国となった。

 高齢化はどうしてもマイナスイメージばかりが先行するが、何も悪いことばかりでもない。裏を返せば長寿社会という一面もあるからだ。ただし、長寿が喜ばれるのは、身も心も健康で元気な場合に限られる。車いす生活や寝たきり生活、認知症などにかかってしまうと、家族に大きな負担がかかってしまう。介護施設もすでに飽和状態で、とくに年金で費用をカバーできるような施設は定員オーバーしているところも多い。何よりも皆、せっかく長生きしても、そのほとんどの時間をベッドの上で過ごすような生活は望まないはずだ。

 年齢とともに体力や精神力が衰えてくるのは自然の摂理だから仕方がない。でも、たとえ90歳を越えていても元気で、介護も必要なく暮らしている高齢者も多い。元気で長生きするには、どんな秘訣があるのだろうか。

 認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、生活習慣病との関連性があり、大きな影響を受けることが指摘されている。糖尿病や高血圧症、脳血管障害などの予防や治療を行うことは、間接的に認知症リスクを軽減することにつながることが分かってきた。

 生活習慣病を防ぐには、適切な治療や定期健診を受けるだけでなく、普段の生活に気を配る必要がある。とくに歳をとると、運動する機会がめっきり少なくなってしまうが、これは大きな問題だ。加齢によって筋肉量や筋力、身体機能が低下すると、呼吸器や血管疾患のリスクが高まる。また、腰や関節などに痛みや疾患を抱えていると、生活の幅が狭まってしまい、認知症の進行が早まってしまうことも多いという。最近は、定年後にウォーキングやプール運動を始める人も増えたが、歳をとってから急に始めてもなかなか続かなかったり、かえってストレスに感じてしまうこともある。若い内から運動習慣を身につけておきたいものだ。

 運動と共に、生活習慣病の予防と改善で重要なことは食事だ。いろいろな食べ物をバランスよく摂ることはもちろん、低糖質、低塩分を心がけたい。

 また、近年の研究では自然の食品の中に認知症の予防や改善に役立つものがあることも知られるようになってきた。ここ数年で、急激に注目されている「プロポリス」もその一つだ。

 「プロポリス」は、ミツバチが木の新芽や樹脂などの植物源から集めた樹脂製混合物のことだ。ミツバチはこれを巣の外壁や隙間に塗りつけてウイルスやバクテリアなどの進入を防ぐほか、巣内において菌の繁殖などを抑えて清潔に保つために使っているという。プロポリスの優れた抗菌効果は古くから知られており、天然の抗菌・抗生物質ともいわれ、ミツバチ由来の健康食品の一つとして、蜂蜜やローヤルゼリーなどとともに広く愛用されている。

 しかも、そんなプロポリスに認知機能の低下を抑制する効果があることが分かったらしい。九州大学大学院歯学研究院の武洲准教授らが昨年4月に発表した研究成果によると、ブラジル産プロポリスを引用することで、中国チベット高原に住む健常な高齢者の認知機能低下ならびに全身性炎症の改善効果が確認されたという。同研究は、山田養蜂場のみつばち研究助成基金などの助成を受け、2年間にわたって行われたもので、権威あるオランダの国際学術誌『Journal of Alzheimer’s disease』にもオンライン掲載されて注目を集めた。また、日本でもテレビで紹介されるなど話題を呼んでいる。

 プロポリスだけでなく、最近はミツバチ由来の健康食品が何かと話題になることが多い。山田養蜂場みつばち健康科学研究所の研究でも続々と新発見が生まれている。古代から健康食品の代表格のような存在であったミツバチの恵みだが、まだまだ我々の知らない秘密が隠されているようだ。(編集担当:石井絢子)