JAXA、定説を覆す新しい知見を発表

2013年02月19日 12:19

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、銀河系においてどのように高エネルギー粒子(宇宙線)が作り出されているのかという問題に関して、新しい知見が得られたと発表。土星探査機カッシーニのデータ解析から得られたもので、従来の定説とは対極にあるものだという。

 銀河系は宇宙線で満たされており、大気層を貫いて地球表層にも降り注いる。この宇宙線の強度は、地球が置かれている宇宙環境を決める重要なものであり、その宇宙線粒子がどのようにして作りだされているのかという問題は、宇宙物理の最重要課題のひとつに位置づけられているという。この課題に対し最有力の学説は、宇宙空間ガス中にある強い(マッハ数の高い)衝撃波における加速というものである。特に、重い星がその一生の最期に超新星爆発を起こすと強い衝撃波が発生するので、超新星残骸が宇宙線生成の場であると考えられているのである。

 この宇宙線加速の問題の解決を図るに際し、宇宙ガスの特徴から、磁場の効果がきわめて重要であり、磁場の効果を理解することが必須となる。しかし、磁場の効果を地上の常識から予想することは不可能なため、実際の測定データが求められていた。太陽系にも電離ガスの超音速流は存在するため、詳細を観測し測定データを得ることはできるという。ところが、太陽系内の衝撃波はほとんどが弱く、そこから超新星残骸における強い衝撃波に関する知見を得ることは困難であったという。

 こうした中、2004年から土星を周回しての観測を開始した土星探査機カッシーニが、2007年、太陽風とよばれる太陽からの粒子の流れが土星の磁気圏に衝突することにより生じた強い衝撃波を詳細に観測。はじめて実証に基づいて強い衝撃波が粒子を加速させる現場を捉えたのである。

 これを解析したところ観測史上最高のエネルギーを持つ電子(相対論的電子)が観測され、その時の磁場の状態は、磁力線と流れの向きがほぼ平行であったという。これは、太陽系での過去の観測結果から、電子加速を起こさない条件だと考えられてきたもの、つまり従来の定説とは対極の結果となったのである。その理由としてJAXAは、これまでの観測対象が弱い衝撃波だったの対し今回の事例は強い衝撃波であることを挙げている。

 ハヤブサの帰還で一時は盛り上がった日本人の宇宙に対する興味であるが、やたらと映画化されるなど一過性のブームに終わり、消費されてしまった観がある。今回のJAXAの発表は、新たな発見ではなくあくまでも知見ではあるが、宇宙の壮大さやそこに広がる夢を再び認識させてくれるものと言えるのではないだろうか。(編集担当:井畑学)