「見える化」から「効率化」の時代へ。将来のエネルギー・マネジメントを牽引する日本の無線通信技術

2019年03月31日 14:50

ローム_0327

Wi-SUNの最新規格「Wi-SUN Enhanced HAN(Home Area Network)」に世界で初めて対応したロームの無線通信モジュール「BP35CO-J11」

 IoTの普及に伴なって、スマートメーターの導入も世界規模で加速している。イタリアやスウェーデンでは、すでにほぼ全戸への導入が完了しており、アメリカでも2020年には100%の導入を予定している。イギリス、スペイン、フランスにおいては、2020年にまでに全戸導入を義務化する方針だ。日本は欧米諸国と比べると大幅に遅れているといわざるを得ないものの、2024年までにはほぼ全ての世帯への導入が完了するといわれている。でも、どうして世界中の先進各国で今、それほどまでにスマートメーターの普及が推進されているのだろうか。

 スマートメーターを導入することで得られる主なメリットは検針作業の省力化だ。通信回線を利用して電力使用量を送信するスマートメーターは、これまで膨大な人員を投入して行ってきた作業を自動的に行える上、より正確なデータをリアルタイムで収集できる。また、そのデータは電力事業者はもとより、自治体や他分野の事業者にとっても有益な情報源にもなる。例えば、電力使用状況を監視することで、高齢者の見守りサービスや 空き家の把握に利用したり、他にも郵便や宅配物の再配達業務の効率化に役立てたり、様々なニーズが期待されている。また、スマートメーターのデータを利用した新しいビジネスも誕生するかもしれない。

 そんなスマートメーターを支えているのが、高度な無線通信技術だ。スマートメーターの普及では日本は欧米諸国に少し後れをとっているものの、この通信技術については、日本は他国をリードしている。

 例えば、電子部品大手のロームは、Wi-SUNの最新規格「Wi-SUN Enhanced HAN(Home Area Network)」に世界で初めて対応した無線通信モジュール「BP35CO-J11」を開発した。

 日本発の国際無線通信規格であるWi-SUNは、既存の無線との電波干渉が少なく、低消費電力かつ長距離データ通信が可能な920MHz帯の電波を利用するもの だ。HEMSコントローラーやスマートメーターなどのIoT向け通信のほか、公共サービスなどの通信ネットワークとして活用されている。

 Wi-SUNはもともとWi-Fiよりも通信距離が長いのが特長で、Wi-Fiの通信距離が10メートル程度なのに対し、Wi-SUNは1キロメートル程度の通信が行える。新規格の「Wi-SUN Enhanced HAN(Home Area Network)」は中継通信が可能なため、 その距離を倍に延ばすことができるという。また、スリープ機能を搭載したことで、待機時の消費電力を抑えられるため、電池駆動の機器などでも採用しやすい。さらに、ロームの無線通信モジュールは、独自機能として無線によるファームウェアの遠隔更新を可能にしており、マイナーアップデートが必要になった場合でも、機器の回収や交換作業が不要という。これにより、スマートメーターのみならず、屋外のEV充電器や太陽光発電設備のパワコン、開閉センサーによるセキュリティ強化など、これまで以上に柔軟なIoTシステムを実現することが可能になるのだ。

 ホームユースだけではなく、工場や商業施設のIoT化にも活用でき、効率よくデータを収集し、分析することで、更なる効率化も図れるだろう。

 これから先のエネルギー・マネジメントは、IoTやスマートメーターで情報を収集して「見える化」する時代から、そのデータを利用して、より「効率化」を図る時代に突入する。スマートメーターの普及段階では一歩出遅れてしまった日本だが、活用段階では、その技術力で世界の市場を牽引していくことを期待したい。(編集担当:藤原伊織)