国民の原発問題への関心継続こそ原発抑制力に

2019年04月28日 10:21

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政府も「原子力規制については高い独立性を有する原子力規制委員会の判断に委ねるというのが政府の一貫した方針であり、その方針に変わりない」(菅義偉委員長)と規制委員会の方針を肯定した

 日本経済団体連合会の中西宏明会長が原発再稼働を促す発言に加え、リプレース(建て替え)や新増設にまで言及する発言を続けている。「人類の将来を長い目で見据えれば、核融合、核分裂といった原子力エネルギーをうまく活用していくことは重要だ。放棄してはならない」とはばからない。地球温暖化対策に有用なども理由にし、原発に執着する発言を繰り返す。

 政府・自民党と二人三脚の経団連が原発再稼働を推進する発言を繰り返す中、原子力規制委員会が24日、原発に義務付けられた「テロ対策施設(特定重大事故等対処施設)の建設」期限に延長を認めない。設置期限に間に合わない原発は『運転停止』を命じるとの姿勢を明確にしたのには国民のひとりとして、委員会の独立性に救われた気がした。その立場を堅持してほしい。

 政府も「原子力規制については高い独立性を有する原子力規制委員会の判断に委ねるというのが政府の一貫した方針であり、その方針に変わりない」(菅義偉委員長)と規制委員会の方針を肯定した。

 更田豊志委員長が「事業者の個別の意見を聞けと言われれば聞くことはあるが(延長は認めないとの)方針が適用されないということは恐らくない」と断じた姿勢も評価したい。

 テロ対策施設の設置は「再稼働に必要な原発の工事計画認可から5年以内に設置すること」になっている。

 関西電力、九州電力、四国電力が「状況変化」などを理由に期限の延長を求めたが、更田委員長は「建築物を造るということに関して、岩盤が堅かったとかというのは本来、建設に際して考慮されているべきことで、この時期になって『状況変化』というのは、まっとうに考えて、考えにくい」と突っぱねた。

 もともと2013年の新規制基準施行から5年の期限であったものを、原発審査の長期化から現行の規定に延期された経緯がある。それをさらに「状況変化」などと事業者の求めに応じ、さらに延長を認めるようなことになれば、なし崩し的に「状況変化」が次々生じ、安全性を高めるスピードが鈍くなるのは想像できる。

 更田委員長は「状況変化」は「極めて大きな自然災害があった場合などだ」と指摘したが指摘はまっとうだ。

 九州電力川内原発1号(期限は来年3月17日)、2号(来年5月21日)。関西電力高浜原発3号(来年8月3日)、4号(来年10月8日)。四国電力伊方原発3号(21年3月22日)などは期限まで時間がない。早急に対応できなければ「運転停止」に追い込まれるだろう。

 原発運転の停止とともに「電気料金」の値上げ議論が再び浮上することになるのだろうが、原発ゼロ社会を期待する側からすれば多少の値上げは享受する覚悟でいる。むしろ一層の省エネ推進と再生可能エネルギーの推進に目を向ける機会、原発不要を再び立証できる機会になると期待したい。

 そもそも「高レベル放射性廃棄物」をどうするのか、最終処分の解決も図れないまま、最難関の課題を未来に先送りし、原発を再稼働しようとする無責任さこそ許されない。福島第一原発事故は安全神話の中で隠れていた、あるいは隠されていた「原発が抱える問題」を国民に浮き彫りにしている。国民が原発問題から目を離せば、間違いなく原発のリプレース、新増設の道を開くことつながるだろう。関心を持ち続けることが原発抑止力になる。(編集担当:森高龍二)