安倍晋三総理が「自民党総裁」として改憲推進派団体の会合に寄せたビデオメッセージ。『改憲を実現し来年施行したい』との考えに変わりないとアピールした。そこまで急ぐことを国民の何%が必要と感じ、望んでいるのか。不思議でならない。
改憲問題はお尻を切って議論する案件ではない。議論が必要なら憲法審査会で慎重に、時間をかけ、議論していくべき。自民党や安倍氏が改憲テーマで強調する「自衛隊を憲法に書き込む」必要性や緊急性がどこにあるのか、改憲への立法事実がわからない。
与党の公明党・北側一雄憲法調査会長でさえ「多くの国民は(自衛隊を)憲法違反だとは思っておらず、違憲論があるから(憲法に)明記するというのは十分理解できないところがある」とNHK番組で疑問を提起した。「憲法に書き込む必要性などはしっかり論議すべき」としている。
その通りだ。しかし安倍氏は「自衛隊を憲法に明記し、違憲論争に終止符を打つ。2年前にもビデオメッセージで『2020年を新しい憲法が施行される年にしたい』と申し上げたが、今もその気持ちに変わりはない」と強調。
安倍氏や自民党は9条改憲議論を何とか前に進めたいようだ。しかし、9条改憲議論以前に、国民意識にもっと目を向け、配慮すべきだろう。1975年以降生まれの世代、特に10代~30代は憲法に対する意識や関心が薄いのではと思われる直近データがある。
サンプル数が少ないため数値で示すのは難しいが、憲法記念日の3日、大阪平和委員会青年学生部・青年協議会が阿倍野区阿倍野筋1丁目の歩道橋周辺で朝9時半から11時過ぎまでの間に若者112人に憲法アンケートした結果、「5月3日は何の日」の問いに正答者は23人(20・54%)だった。
112人の内訳は10代96人、20代12人、30代4人ということだが、若者にとって憲法が遠い存在になっているのかもしれない。そこが危惧されるなかで、憲法を変えるべきかとの問いには71人が「わからない」と答えている。
「変えるべき」と「どちらかといえば変えるべき」は14人、理由では「自衛隊の項目がほしい」「同性婚を認めるべき」などの意見があった。「変えるべきでない」と「どちらかといえば変えるべきでない」は27人。理由では「今のままでいい」「悪い方向に変わりそう」と危惧する意見がある。
新聞やネットによく登場する「憲法9条(戦争の放棄規定)」について、変えるべきは11人、変えるべきでないは76人。わからないが24人となった。変えるべきでは「武力は必要」「武力を持たないと平和は保てない」「攻撃されたとき対応できない」という意見。変えるべきでないでは「戦争を起こさないため」「戦争に参加したくないし、かかわりたくない」「9条を変えてしまうとまた戦争に発展しそうに思える」などの意見。
9条2項については、変えるべき18人、変えるべきでない61人。9条を変える事に否定的意見が圧倒的に多いのだが、わからないも32人いる。今の段階では9条や緊急事態条項について広く知りえる機会を暮らしの中に提供していくことこそ大事だということを浮かび上がらせたデータといえる。
賛否を問う前に判断する素地を育んでいくこと、国民1人ひとりが自身の問題として感じ、憲法を知る機会を提供する努力から始めてほしい。護憲・改憲を問わず、与野党は憲法を身近に学べる環境づくりに力を注いでいただきたい。(編集担当:森高龍二)