今夏の参院選。国会機能回復につながる機会になるかどうか注目される。現況は国会の圧倒的な与党勢力下で「政高党低」の常態化が「国会を行政の下請け」的な危機的状況になっている。
状況を改善させなければさきの水道法のように、「国会の立法機能、チェック機能」が充分働かず、国民の懸念をよそにどんどん閣法が成立し続けることになるだろう。
安保や基本的人権(表現の自由、知る権利など)、社会保障など暮らしや安全、安心にかかわる問題はできるだけ与野党超えて合意できる内容に原案修正し、その過程で国民に説明していきながら成立を図ることが重要だ。
しかし、その姿勢が軽んじられてきたことは、安倍政権の下での世論を2分する案件の審議に対するこの6年の経緯からも説明の必要はないだろう。
だからこそ、国会勢力図の修正が必要なのだ。夏の参院選は改選数121に、昨年夏の改正公選法(これも審議不十分との指摘の中、自公の多数で可決、成立させたもの)で『3増(埼玉選挙区1、参院比例区2)』したものを加えた『124』議席を与野党で争うことになる。
参議院議員のうち会派でいうと「自民・こころ」(69)を、立憲を中心とした野党がどこまで削減させることができるかにかかっている。結果はそのまま、参院のチェック機能を強化させたり、さらに弱いものにしてしまう危険性もあると筆者は考えている。
なぜか。自民党の質的変化が背景にあると感じるからだ。1990年代までの自民党にはタカ派は当然いたが、ハト派も存在し、党内でバランス機能が働いていたように感じられた。
しかし、2012年、安倍政権復活後はタカ派が圧倒的となり、憲法9条の事実上の「解釈改憲」で安倍総理・総裁による「政高党低」状況の中、国民を視点に職務遂行すべき官僚が行政(官邸)に忖度し、国会で虚偽答弁を行い、デタラメデーターを提出し、決裁書類を改ざんするなど、国会をないがしろにしているとしか見えない強行さが目に余る。
改憲問題も同様で、衆参議席数の圧倒的な与党優位が、憲法審査会に慎重な野党議員に対し自民憲法改正推進本部長の口から「職場放棄」などと暴言が吐かれたり、野党6会派が反対する中、衆院憲法審査会が一方的に開催されたりの横暴さを生じさせてきた。
参院での与野党勢力図の是正がこうした横暴さを修正する一番の効果であり、その前の統一地方選での地方組織図の微妙な変化が、与党に軌道修正させる機会になることだけは確かなのだろうと感じている。
安倍晋三総理は4日の記者会見で、政権運営について「大切なことは、しなやかさを持って対応していくことではないのかなと思う。謙虚で、寛容な姿勢で、政権運営を行っていきたいと思う」と語った。
そうなっていなかったことは昨年の国会をみても働き方改革(高度プロフェッショナル制度の創設)、カジノ法(IR法)、改正出入国管理法、改正水道法、改正漁業法などなどの審議からもわかる。総理は事実として「謙虚で寛容な政権運営を行っていく」のではなく、「いきたいと思っている」に過ぎない。国民は謙虚で寛容な政権運営をせざるを得ない状況を生み出すほかない。統一地方選、参院選、その後の衆院選がその機会になるのかどうか。注視したい。(編集担当:森高龍二)