2019年4月30日をもって平成という時代が終わり、翌5月1日に新元号「令和」の時代がはじまった。改元の祝賀ムードを盛り上げるためとして、史上初の10連休となった大型連休も終え、政府の思惑どおりに実質的な「令和元年」がはじまった?── 不思議な高揚感に包まれた時代のはじまりだ。
■論争を呼んだ生前退位と新元号発表の日
今回の改元には、さまざまな報道が相次いだ。まず、前天皇陛下(平成天皇)の退位および新天皇の即位の時期、そして新しい元号をいつ発表するのか、で大いに揉めた。
つまり、自民党保守派を代表する衛藤晟一首相補佐官らが、今の天皇陛下(平成天皇)が在位中に次の元号を発表、今の天皇陛下(同)が次の新元号を決める政令に署名するのは、天皇一代で一元号とする「一世一元の制」にそぐわないと激しく抵抗した。
結局、5月1日に新天皇即位となり、新元号は4月1日に発表となった。が、これはある意味でメガバンクや大企業、行政機関のシステム管理者に対して大型連休中に“システム管理者としての仕事を済ませ、5月7日から滞り無きように”という暗黙の指令だった。
新元号発表の少し前、3月24日に奇妙なアンケート調査結果が報道された。日本テレビ系列NNNと読売新聞が行なった世論調査として、「ふだんの生活や仕事で西暦と元号のどちらを多く使っているかで、“元号”と応えた人が41%と最も多く、“西暦”は25%、“どちらも同じくらい”が33%だった」という報道だ。この読売新聞系ニュースに「おやっ、まぁ」と違和感を持った人も少なくなかったはずだ。
■新元号発表の翌日、外務省が「西暦表示」を発表
やはりというか、このアンケート調査結果発表と食い違う報道がもたらされた。新元号公表後の翌4月2日になって、「外務省は省内の公式文書で元号表記を取りやめ、西暦に原則として統一する方向で検討に入った」ことが報道され、波紋を呼んだのだ。新元号「令和」決定の直後、安倍晋三政権が新時代の幕開けを盛り上げていこうというタイミングに冷や水を浴びせた恰好だ。
各省庁は通例、外国との交渉の際は西暦を使用する。一方、内部文書は西暦と和暦が混ざる。混乱や間違いにつながる恐れがあるため、外務省幹部は4月1日、今回の改元を機に予算や閣議に関連する文書を除き、西暦表記を原則とする方針を示した。
これに対し、首相官邸は2日、「そんなことはあり得ない」と不快感を表明。自民党幹部が会見で「国内の行政文書は元号を大切にする役所であってほしい」と苦言を呈した。
これまで、公文書に元号使用を義務付ける法令はなく、西暦併記の基準もない。河野太郎外務大臣は4月2日の会見で、公電の表記を西暦に統一する理由について「外務省は外国とのやりとりが多く、和暦を使うことは現実的ではない。西暦を使ったものをわざわざ和暦にする必要はない」と指摘。目的は元号の排除ではなく、業務の効率化だと釈明した。
■日本を代表する大企業で「こっそり」元号使用を止めていた
世論一般でも、元号が「何のためにあるのかわからない」「面倒くさい」「今の時代に必要じゃない」といった“不要論”と、「日本らしい豊かさ、日本の伝統」「私たちの国はキリスト教国ではない」など、元号の存続を訴える意見に分かれている。
ただ、日本の大企業というか基幹産業でも、とっくに元号使用を止めている組織がある。新元号「令和」の時代が始まったが、夜行列車の運行や保守作業なども含め、24時間365日動き続け、連続する時間の象徴であるJRを頂点とする大手鉄道会社では、ある意味「こっそり」と元号使用を止めていた。
鉄道会社は、改元によるシステム改修コスト削減、訪日外国人旅行者の増加などを理由に「元号離れ」を加速していたのだ。私鉄では従来から乗車券に印字する日付には、西暦を用いる例が多かった。が、元号を使用していたJR各社や公営地下鉄でも、前天皇陛下の退位が決まった2017年頃から西暦に切り替えを進めた。JR東日本は2017年12月、JR西日本は2018年2月に券売機を改修。大阪メトロも2018年4月の民営化と同時に変更した。旧営団の東京メトロは2011年から、都営地下鉄も2017年から変更している。
もっとも、「スイカ」などのICカード普及で「キップを買う」という、行為そのものが激減しているわけだが……。(編集担当:吉田恒)