人手不足下のリストラ加速。4カ月で前年1年を上回る。メーカー系で顕著

2019年05月24日 06:23

画・人手不足下のリストラ加速。4カ月で前年1年を上回る。メーカー系で顕著。

東京商工リサーチが2019年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」を公表。4カ月で16社が実施、前年1年間12社を上回る。人数は6697人、3年ぶり5000人超え。富士通、東芝等の製造系が目立つ。

 日本が深刻な人手不足の状況にあることは周知の事実だ。直近のデータ、3月の有効求人倍率は1.63倍で1970年代並の極めて高い水準を維持し続けている。この背景には生産年齢人口の減少による急速な求職者の減少というマクロな要因があるのだが、また急速な産業構造の転換、人口構造の変化の中でミスマッチ人手不足という様相もあり、業種によって大きなバラツキも見られる。

 円安と世界経済の回復によって日本経済が回復基調に転じてからリストラは減少傾向で推移してきたが、このところ人手不足の状況にありながらリストラを実施する企業が増加し始めたようだ。

 14日、東京商工リサーチが2019年の「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」の調査結果を公表している。レポートによると、19年に入ってから5月13日現在までで希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業は16社で、これは前年1年間の12社を超える数字である。

 半年を経過していない5月上旬時点で、前年1年間の数を超えており、これが一過的なものなのか傾向的なものなのか現時点では判断できないが、景気が足踏み状態の中で産業構造転換によるリストラブームが加速した可能性も否定できない。

 募集人数は6697人にのぼり、3年ぶりに5000人を超えた。近年ではリーマンショック時の09年における実施企業191社、募集人員2万2950人をピークに減少傾向で推移してきたが、募集人員で見れば昨年から増加傾向に転じている。

 募集人員で見ると最多が富士通の2850人で、成長分野のIT関連の強化を図り間接部門の効率化を目指した「成長に向けたリソースシフト」の一環として実施されたものだ。次いで多いのはグループ会社を含む東芝の1060人で、収益力強化に向けた構造改革計画の一環として実施、コカ・コーラボトラーズのグループは人件費圧縮で経営効率化を目指し950人を募集している。国内事業の再編を進めるアステラス製薬グループは約700人の応募となっている。この他にも薬価引き下げや新薬の開発費用上昇を背景にした医薬品メーカーの募集が目立っている。

 100人以上の募集は9社で前年の6社を既に超えている。年齢条件付では45歳を適用開始とする企業が10社で最多であった。レポートでは「今後の状況次第では、13年の1万782人以来の1万人超えになる可能性が出てきた」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)