東芝 空間認知・小型AIを開発。自律移動型ロボット等の小型化へ

2019年05月30日 06:32

画・東芝。空間認知・小型AIを開発。自律移動型ロボット等の小型化へ。

東芝が脳の空間認知機能を小型の脳型AIハードウェアで再現。脳・海馬の機能を模倣・再現、小型ロボット等への実装を可能とし、将来は自律移動型ロボット等の小型化向けた活用が期待される。

 一般にAIは人間の意識化された理性(機械的推論)を模倣し問題解決するものが多い。しかし、人間の行動や判断の大部分は意識化されない言わば無意識の推論によって行われている。人間の行動を制御する脳の機構としては錐体路系と錐体外路系がある。錐体路系が人間の意識的行動を制御し、錐体外路系が無意識的な行動を統制するシステムである。

 自転車に乗っているとき我々は自転車のバランスを取る複雑な行動を意識してはいない。しかし錐体外路系の神経システムが自動的に行動を統制することで我々は自転車に乗れるのである。自分が今どのような状態にあるのかを認知するためには空間的認知は欠かせないもので、そのほとんどが無意識系の錐体外路系による自動制御である。

 27日、東芝がジョンズホプキンス大学と共同で、世界で初めて脳内で空間認知をつかさどる海馬の機能の一部を小型な脳型AIハードウェアで模倣・再現させることに成功したことを発表した。

 今回の開発成果をさらに発展させることにより、複雑な脳機能を小型化されたハードウェアで再現し、様々な分野で高知能AI技術を実装することが可能となる、と東芝は考えている。中でも高い空間認知能力が求められるインフラ点検向けの自律移動型ロボット等の小型化が可能となる。

 例えば、自動運転や産業用ロボットはもちろん、災害対策用ロボット分野でこの技術が適用できれば、これまでの機械ではできなかった高度な情報処理が小型・低電力デバイスで実現されることになり、より安全で効率的な社会が実現される。

 東芝はジョンズホプキンス大学と共同でネズミの海馬の空間認知機能を持つ神経網の動作を再現する脳型AIハードウェアを開発した。これは脳機能と同様の神経細胞の反応を模倣・再現できるものだ。

 脳内の情報伝達はデジタル処理ではなくアナログ処理の電気的信号で、空間認知等の脳機能を忠実に模倣するためにはアナログ処理による脳型AIハードウェアの開発が不可欠だ。しかし、これを実現するためには神経生物学の専門知識が必要となるため実現は難しいとされてきた。

 東芝は、神経生物学や工学分野を融合するジョンズホプキンス大学と共同研究を行い、東芝の保有する回路実装技術を組み合わせることによって脳型AIハードウェアの構築を実現した。

 東芝は本技術の成果を5月29日に札幌市で開催されるIEEE国際学会にて発表するとしている。(編集担当:久保田雄城)