令和の幕開けからひと月。未だ残る、「災害の時代」平成の傷あと

2019年06月09日 11:14

復興

今年で8年目となる積水ハウスの新入社員による復興支援活動

令和が幕を開け、ひと月が経った。お祝いムードもひと段落し、新しい時代にも徐々に慣れ始めてきた感があるが、平成に置き忘れてはいけないことも多い。その最も大きなことの一つが「災害復興」だ。

 平成は災害の時代だったという人も多い。1995年1月17日に発生した日本で初めての都市型直下地震「阪神・淡路大震災」をはじめ、2011年3月11日に発生、日本の観測史上最大規模となるマグニチュード9.0を記録し、第二次世界大戦後最悪の自然災害となった「東日本大震災」など、全国各地で起こった地震災害の他、豪雨や豪雪、台風などの被害も相次いだ。被災地では、令和になった今でも不自由な生活を強いられている方々が多いことを忘れてはならない。

 大きな災害をきっかけに、日本の社会も変化してきた。阪神大震災の折には全国各地から多数の支援や救援が寄せられ、これを境に日本のボランティア文化が大きく進展したと言われている。また、日本ファンドレイジング協会が発表した「寄付白書2017」によると、東日本大震災が発生した2011年の日本における個人寄付の総額が、前年の2倍以上の1兆182億円に跳ね上がり、日本人の寄付への理解と認識が高まった「寄付元年」とも言われている。ところが、時が経つにつれ、被災地以外の人たちの中には、すでに災害を過去のものと思ってしまっている人も少なくないのではないだろうか。そんな中でも、平成に起こった数々の災害を風化させてはならないと、積極的に復興支援活動を継続している企業や団体もある。

 宮城県石巻市を中心に活動するNPO法人の石巻復興支援ネットワーク(やっぺす)もその一つ。震災のあった年の2011年12月から、地元住民が主体となり、子どもの居場所づくりや仮設住宅地域でのコミュニケーション形成の促進、子育て中の母親の生きがいや仕事づくりの創出、地域資源発掘と育成プログラム女性と若者を主対象とした社会的企業家支援など、被災地と被災者のニーズに寄り添って活動を行ってきた。

 住宅メーカー大手の積水ハウスもそんな企業の一つだ。同社では、東日本大震災の翌年から毎年、新入社員が被災地復興支援活動に参加するという取り組みを行っている。2018年までの7年間で参加者は累計3,021人にのぼり、今年度も約460 人が参加予定だ。また、東北に加えて熊本、今年度からは広島にも支援範囲を広げている。

 同社は現地で活動するNPO法人などと連携して、被災地の人々の「声」を直接聞くことで、ニーズに基づく支援を行っているという。東北では仮設住宅・災害公営住宅での清掃活動や、熊本では南阿蘇鉄道の車両清掃など、広島では仮設住宅の風除壁設置や、被災した小学校での清掃活動などを行っている。

 また、2016年4月に熊本地震の被害を受けた熊本大学では、同大学の研究者たちが行ってきたこれまでの研究成果を復興に活かすため、学長を総括リーダーとする「熊本復興支援プロジェクト」を設置。その下に、大学の専門家が被災地での都市計画やまちづくりに参加する「震災復興デザインプロジェクト」や、火山性地質の研究を防災、減災対策に活かす「阿蘇自然災害ミチゲーションプロジェクト」など、自治体等の地域の人々と連携した復興プロジェクトチームを結成して、復興活動を行っている。

 また、個人でも、ふるさと納税で災害支援できる「ふるさとチョイス災害支援」や、マイナンバー制度の個人番号カードにためる「自治体ポイント」を使って、宮城県石巻市や熊本県阿蘇市など、被災地の特産品が購入できる制度を利用するなど、被災地の経済活動を支援する方法は増えている。

 新しい時代を迎えた今だからこそ、平成の災害を今一度振り返り、被災地や被災者の方々に同じ日本の国民として何ができるのか考えたいものだ。(編集担当:藤原伊織)