選挙で有権者が問われる6年半の安倍政権と改憲

2019年07月07日 12:01

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憲法9条に自衛隊を書き込む必要があるのか、どうか。今、変えなければならない立法事実があるのか、どうか。その判断をすることが今回の選挙では有権者に問われている

 21日の投票に向け、走り出した参院選挙。最も問われているのは「安倍政権6年半」に対する審判と憲法改正だ。

 憲法9条解釈を変更し、数の力で成立させた、あの安保法制で自衛隊は役目を大きく変えた。覚えているだろうか。あの時の国会紛糾。二分した世論。あの時の賛否を投票に反映させる良い機会なのだ。

 安保法制では「事態対処法」「米軍行動関連措置法」「特定公共施設利用法」「海上輸送規制法」「捕虜取扱法」で米軍など他国が武力攻撃をうけた時、時の政権が武力行使の新3要件を満たすと判断すれば自衛隊は海外で武力行使する。その道を開いた。

 「重要影響事態法」「国際平和支援法」では自衛隊が戦闘地域で弾薬の提供、武器の輸送を可能にした。「PKO法」では駆け付け警護や宿営地の共同防護、治安維持の任務遂行に武器使用を可能にした。「自衛隊法」では米軍など他国軍の防護、米軍への便宜供与を拡大した。専守防衛の自衛隊が海外で武器を使用する危険を背負うことになった。

 そして、安倍晋三総理(自民総裁)は、さらに憲法9条に「私の世代は自衛隊を書き込み、合憲化することが使命」(2017年5月の読売新聞インタビュー)とこの選挙に改憲をあげた。筆者は同世代だが、そのようなことを使命だなどと思ったことはない。

 自衛隊は専守防衛のための必要最小限の実力組織であって、筆者が学生だった約40年前には確かに自衛隊違憲論は存在したが、2000年代に入って、現行の自衛隊を「違憲の存在」などと誰が思っているだろう。「自衛隊を書き込み合憲にしなければならない。それは使命」との発言を繰り返す安倍総理とその支持者のみだろう。

 いずれにしても、さきの安保法制成立で自衛隊は変わった。さらに、憲法に「自衛隊」を書き込めば、その役割はさらに大きく変質するだろう。集団的自衛権の行使は一部容認から、フルでの容認になると解すべき。

 自民党の「9条の2」追加文言は「前条の規定は、わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」。「2、自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」としている。

 法規定は後からの追記規定が先の規定に優先する。憲法9条(戦争放棄規定)と2項(戦力不保持規定)の規定は「わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとる」ものであれば集団的自衛権についても一部容認でなく、制約が外される。

 そのことも踏まえて、憲法9条に自衛隊を書き込む必要があるのか、どうか。今、変えなければならない立法事実があるのか、どうか。その判断をすることが今回の選挙では有権者に問われている。(編集担当:森高龍二)