関西電力の会長、社長ら幹部20人が浜岡原発のある福井県浜岡町の元助役から3億円を超える金品を受領していた問題。社長を除く会長らは筆頭株主・大阪市からの要求や厳しい世論の前に9日辞任したが、原発マネー還流疑惑に対する説明責任は辞任前も辞任後も何ら変わるところはない。
元助役が関電幹部らにばらまいた金品の原資は浜岡町の建設会社・吉田開発から出ていたとされる。その吉田開発に5年間で関電が発注した安全対策工事費(2018年8月期)は21億円超と6倍にもなった。
吉田開発が元助役に原資を提供し、その金で現金や金貨、1着50万円のスーツ仕立て券などが贈られていた。その原資をねん出するために関電が吉田開発に工事発注の際、95%で発注できる工事を4%上乗せ発注し99%で捻出していたとすれば、関電役員らは会社、株主に損害を与えただけでなく、電気利用者の信頼をも裏切る許しがたい構図だ。工事代金の原資は電気料金だ。
国会でこれを解明しなければ誰がやるのか。10日の衆院予算委員会でも関西電力の社長が任命した第3者委員会委員長の下での調査に疑問が提起された。
社長ら幹部は元助役の贈り物にどっぷりつかり、吉田開発への国税局の税務調査で表面化を恐れて、1億6000万円分を返還し、元助役死亡後に、すべての責任を元助役に被せ、「金品は預かっていた。返す機会をうかがっていた」と主張する。内部告発まで黙殺したことが国会で指摘された。
本当に受け取ってはいけない、あるいは返す気のあるものであれば、金品を受け取った日時・場所・贈られた金品の記録はきっちり控えておくものだ。それが常識。しかし、彼らは記憶に基づく自主申告で、その額でも3億円超になったという。今月上旬の記者会見では辞任することなく続投すると主張した。世論の批判が高まり役員入れ替えになったというのが現実。
こうした体質のトップ、しかも金品を受領していた当人が選んだ第3者委員会の委員長のもとで行われる調査。第3者委員会といえるのか。調査は東電と協議しながら進めるとなれば、どこまで掘り下げた調査ができるのか、名ばかりの第3者で会社擁護の結果にしかならないとの懸念がある。社外取締役が選任したメンバーで仕切りなおすべきではないか。
馬淵澄夫衆院議員は10日の衆院予算委員会で、告発文を示し、この点を強く求めた。調査結果に国民の信用を得るためには少なくとも社外取締役が選任したメンバーで仕切りなおさせるべき。
あわせて、問題なのは安倍晋三総理が国会答弁で「まずは第3者委員会の調査結果を待ち」と関電任せの姿勢に終始していること。
関電は調査結果を「12月下旬」までにと第3者委員会に伝えている。12月9日に閉じる臨時国会に間に合わない。原子力政策の根幹にかかわる問題の逃げ切りを図るつもりなのか。総理は国会で原発マネー還流問題に光が当たるのを避けたいのかといわれても仕方あるまい。自民党も「民間企業のことだから」と関電幹部の参考人招致に及び腰。
国の原発政策への信頼回復の為に総理・与党こそ、率先して関電幹部の国会招致を行い、一連の経緯、問題を浮き彫りにし、改善すべき点を見つけ、改善に取り組むべきではないのか。
原発再稼働に地元同意が必須条件になっているが、そのために地元有力者を軸に金品が動き、原発マネーで抱え込むような構図ができてしまったのか。そうした構図が形成できないよう、原発から30キロ圏内にある自治体すべての同意を再稼働条件にするよう、再稼働の基準もより厳しくすべきだろう。
日本共産党の小池晃書記局長は「原発事故が起きても責任をとらず、原発マネーを受け取っても言い逃れを図る。こんな電力会社に住民を危険にさらす原発再稼働など認めるわけにいかない」と言った。関電幹部の参考人招致も認めず、解明から逃げれば、原発事業者への不信、政府・与党への不信は募る。総理・与党は原発マネー還流問題の解明に率先して当たるべき。(編集担当:森高龍二)