東京オリンピックでは国内最多の600枚! 需要が拡がるデジタルサイネージ

2020年02月09日 11:05

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ロームは2月3日、NXP社の「i.MX 8M Nanoファミリ」に最適なパワーマネジメントIC「BD71850MWV」を開発を発表。 IoT機器などのさらなる長時間駆動・小型化に貢献する

 ディスプレイの大型化や薄型軽量化により、デジタルサイネージの需要が拡大している。普及当初は主に金融機関や交通機関の情報表示の用途などで採用されていたが、最近では商業施設や公共施設をはじめ、一般企業や教育機関など、幅広い分野で導入が進んでいる。

 例えば、東京オリンピックで開・閉会式や陸上競技などが予定されている国立競技場の観戦エリアにも、国内のスタジアムでは最多となる約600枚ものデジタルサイネージシステムをパナソニック〈6752 〉が納入した。今後はこういったスポーツ施設などでの活用も広がっていくだろう。 また、観光地においても、訪日外国人に向けた多言語対応のデジタルサイネージの活用が始まっている。

 富士キメラ総研がまとめた「デジタルサイネージ市場総調査 2019」でも、 デジタルサイネージの2025年におけるシステム販売と構築の市場規模を986億円と予測している。これは2017年比で166.0%となる。同社では2022年から2025年にかけて市場が大きく変化すると見ており、多言語対応ソリューションや防災・減災ソリューション、行動分析・販促ソリューションなどとの連携が加速していくと見込んでおり、これらが需要拡大の要因となっているようだ。

 日本のみならず、世界中でデジタルサイネージの導入が進む中、大きく躍進しているのが、世界30か国以上で事業を展開している、オランダの半導体サプライヤ、NXP Semiconductors社(以下、NXP)だ。NXPは、エネルギー効率、コネクテッド・デバイス、セキュリティ、ヘルスケアの4つのメガトレンドに対応した汎用製品をグローバルに提供しているが、その中でも同社の「i.MX 8M」シリーズは、演算能力と省電力性能、音声・音楽の処理に優れたアプリケーション・プロセッサ、人間でいう所の頭脳として、デジタルサイネージにも採用されている。

 同プロセッサシリーズは、高度なオーディオ機能、高速インターフェースなどにも対応し、省電力かつ高性能なソリューションを提供できるのでデジタルサイネージに最適だ。今後、ユーザーとのインタラクション(対話・相互作用)など、利用スタイルが多様化、複雑化しても充分に対応できるスペックを持っている。

 そして、そんな「i.MX 8M」シリーズに、最適な高効率パワーマネジメント IC(以下、PMIC)を提供しているのが、日本の電子部品メーカー、ローム株式会社〈6963〉だ。NXPのプロセッサを頭脳とすれば、PMICは心臓部分ともいえる重要な部品である。

 同社はすでに、「i.MX 8M」シリーズの中でもデジタルサイネージなどの映像処理に適した「i.MX 8M ファミリ」に最適なPMIC「BD71837MWV」をリリースしている。さらに、2月3日にはオーディオ機能に特化した、「i.MX 8M Nano ファミリ」の電源系統に合わせて設計した、PMICの新製品「BD71850MWV」を発表している。新製品は、制御ロジック、降圧 DC/DC コンバータ(BuckConverter)6ch、LDO レギュレータ6chを集積し、プロセッサだけでなくアプリケーションで必要とされる DDR メモリにも 1 チップで電源供給が可能だ。スマートスピーカーなどのネットワークオーディオや産業用インターフェースなど、i.MX 8M Nano プロセッサが適用されるIoT 機器のさらなる長時間駆動・小型化への貢献が期待される。

 プロセッサやICを消費者が直接目にする機会はほとんどない。しかし、デジタルサイネージやスマートスピーカーなど、最新機器の向こうでは確実に技術の革新が進んでいるのだ。(編集担当:藤原伊織)