中国武漢市を発生源とする新コロナウィルス感染症に対し日本政府は国内の感染者を最小限に抑える水際作戦に注力してきた。しかし既に東京、神奈川、和歌山、沖縄等で渡航歴や中国人との濃厚接触の履歴のない感染者が出て、ヒト~ヒト感染の段階に入ったと言える。日本の感染者数は規模が違うものの中国に次ぐ多さで観光業への風評被害が懸念される。
海外向けWeb販促やインバウンド集客事業を行うライフペッパーが2月5日から7日に訪日中の外国籍男女199名を対象に東京23区内で「訪日外国人観光客の新型肺炎に対する意識・行動の変容に関する調査」を実施、14日にその集計レポートを発表した。
調査結果によれば、「新型肺炎に関連し訪日滞在への不安はあるか」という質問に対して回答者全体では「全く感じていない」と「感じていない」の合計は21%、「とても感じている」と「感じている」の合計は41%と「感じている」者が「感じていない」者の2倍になっており、やはり全体として不安を感じている者が多そうだ。
しかし、欧米豪圏と中華圏を比べると様相が異なる。欧米圏では「全く感じていない」が47%、「感じない」が34%で両者を合わせると81%が不安を感じていないと回答している。一方、中華圏では「全く感じていない」は4%のみ、「感じない」は9%で「全く感じていない」を比較すると欧米豪圏は中華圏の11倍以上となっている。
欧米豪の訪日客が不安を感じない理由としては「日本は自国に比べて綺麗(清潔)なので、感染症が騒がれているアジアでも、不安感が少ない」とのコメントが多くなっている。
しかし、訪日客の多くは中華圏からの者であり、また中華圏からの訪日客の変化は食に多くみられ、この調査から寿司や魚介といった食品を避ける傾向が明らかになっており、食に関連する業者への影響は避けられないであろう。
「訪日旅行中、不安が和らいだ/助かった事は何か」という質問には、欧米豪、中華圏全体で「店舗や宿泊施設のアルコールスプレーやマスクの設置」や「清潔感」が25%を超え突出して多くなっている。欧米豪圏の者が不安を感じない理由とも一致している。レポートでは「インバウンド対策を行う企業は、過剰に反応するのではなく、まずは訪日観光客にとって安心感を与えられるよう、冷静な対応が求められている」とコメントしている。
風評被害を払拭するには訪日客を安心させるような対応によって信用を作り出す努力が重要なようだ。(編集担当:久保田雄城)