検事長定年延長の閣議決定「違法の疑い濃厚」

2020年02月23日 08:15

 安倍総理の都合で一般法が特別法に優先するようなことが起きたり、法解釈が変えられたりした東京高検検事長の定年延長問題に対し、検察内部からも、憲法学や行政学の専門家からも「法の支配をないがしろにする行為だ」と強い懸念、反対の声が上がっている。法治国家としての原理原則が問われる事態に、問題の検事長が法を順守し、辞任するよう求める声にもつながりそうな雲行きだ。

 憲法学者ら法律の専門家らでつくる立憲デモクラシーの会は21日、安倍内閣の「閣議決定による恣意的な行為に抗議声明を出した。「今回の閣議決定は人事院規則および国家公務員法に違反している疑いが濃い」と指摘している。

 この日、法の専門家らは「国家公務員法は、国家公務員の身分や職務に関する一般法である。検察官も国家公務員ではあるが、検察庁法が特別に検察官の定年を定めている。いわゆる一般法と特別法の関係にあり、両者の間に齟齬・抵触があるときは、特別法が優越するという考え方が受け入れられている。国家公務員法81条の3が制定された当時の政府見解でも、検察官にはこの規定は適用されないという考え方が示されていた」と指摘。

 そして「閣議決定で制定当時の政府見解を変更し、国家公務員法の規定を適用して東京高検検事長の定年を延長してよいのか」と詰問。

 「権力の中枢にある者の犯罪をも捜査の対象とする検察官の人事のルールは、国政上の最重要事項の一つであり、全国民を代表する国会の審議・決定を経ずして、単なる閣議決定で決められるべき事柄ではない」と断じた。

 また「ときの政権の都合で、こうした重大事項についても、従来の法解釈を自由に変更してかまわないということでは、政権の行動に枠をはめるべき法の支配が根底から揺るがされる。政府の権限は、主権者たる国民からの預かりものである。預かり物として大事に扱い、メンテナンスを施し、次の政権へ、将来の国民へと手渡していかなければならない。その時々の都合で長年の法解釈を変更して恬として恥じるところがないというのでは、国民の法の支配への信頼は崩壊してしまう」と正論で、政府の問題を提起した。

 法律の専門家らは「任命権者の裁量的判断で人事院規則に反する定年延長が許されるとなれば、内閣から独立した立場から国家公務員の政治的中立性と計画的人事を支える人事院の機能は骨抜きとなりかねない。つまり、問題となる国家公務員法の規定が適用されるとしても、今回の閣議決定は、人事院規則および国家公務員法に違反している疑いが濃い」と訴えている。

 東京高検検事長の定年延長には全国の検察幹部が集まる会議でも「不偏不党でやってきた検察への信頼が疑われる」と強い懸念と延長措置への疑問が提起されたことが複数のマスコミで報じられている。良識があれば当然の問題提起だ。(編集担当:森高龍二)