日本政府は5月14日、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言について、特定警戒都道府県となっていた茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県と、特定警戒ではない34県を宣言の対象から外すことを決定した。東京、大阪、北海道、埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、兵庫県の8県については、引き続き特定警戒を継続する。
今回解除された39県に関しては、待ちに待った緊急事態宣言解除だ。当該地域の経済活動もようやく再開されることになり、ホッとしている人も多いことだろう。しかし、警戒態勢を解いた後すぐに集団感染が発生している韓国などの例もある。再び巣ごもりの生活に戻ってしまわないように、これまで以上に感染防止の注意と意識が必要だ。
そんな中、感染拡大が懸念される対面式の接客ビジネスを主にしている業種の中には、徹底した感染防止と顧客への信頼確保のために、様々な取り組みをスタートしている企業も多い。
例えば、ハウスメーカーのアキュラホームでは、電話やメールのほか、Webによるビデオ会議システムなどを活用した「オンライン勉強会」やデザイナーと気軽に間取りの相談が出来る「こんなおうちに住みたい研究会」を実施している。自宅に居ながら、家づくりのプロがプランや見積り、土地探しなど、幅広い質問に答えてくれるという。
また、同社では緊急事態宣言期間中、予約制で、時間中は1組限定でモデルハウスを貸し切りで見学できる「展示場貸切勉強会」などのサービスを開始した。他の来場者との接触を気にしなくて済むので、顧客の評判も上々のようだ。
また、引っ越し業界でも、 大阪府東大阪市の引越革命株式会社が、WEBで選択するだけで自動で見積を算出するシステムで特許を取得。見積から契約、段ボールの配送から料金精算に至るまで、引越当日まで顧客と非対面でで完結させる完全通販スタイルの引越を確立した。スマホwを操作するだけで全て完結するため、スタッフが来訪しての打ち合わせも必要なく、顧客とスタッフ双方の感染リスクを極限まで抑えている。
岩手県の盛岡市では、対面ビジネスでも最も被害を受けている飲食店とタクシー会社による異例のコラボレーションが始まった。飲食店の料理をタクシーがデリバリーする「デリタク ACTION 盛岡 宅配サービスプロジェクト」だ。盛岡商工会議所青年部と盛岡地区タクシー協会が企画したもので、料理代に500円の配達料をプラスするとタクシーが自宅まで料理を届けてくれる。従来、タクシーによるデリバリーは禁止されているが、新型コロナ対策の特例措置として国が認めた合法なサービスだ。
新型コロナウイルスが社会にもたらしている被害は甚大だが、その一方で、こういった新しいサービスを始めるきっかけにもなっている。これらのサービスは感染防止が第一目的だが、コロナ収束後も、顧客の利便性を高め、評判を集めそうなものが多い。今まで当たり前だったものが、当たり前でなくなってきている。今世紀最大のピンチともいえるこの状況の中でも、柔軟な発想と顧客ファーストの視点でこの難局を乗り切ろうと尽力する企業の姿には、次の社会を形成する新しい芽が生まれ始めているのかも知れないという希望がもてる。(編集担当:今井慎太郎)