新型コロナウイルスの感染者は増加し続けている。3月下旬から比べればその勢いは落ちたようにも感じられるが終息に向かう兆しは見られない。緊急事態宣言も当初は1カ月と想定されていたが、出口戦略への議論が始まったというものの、自粛解除への動向は不十分で1カ月延長された。
人々は外出自粛をはじめ感染抑止のために様々な工夫をしているが家庭内で飼っているペットへの感染も心配される。既に2月下旬から3月上旬に香港において新型コロナウイルス感染者の飼育犬からPCR陽性反応が出た事例が報道された。さらに、ニューヨークやインドの動物園ではネコ科動物への感染が、ベルギーやアメリカでは猫への感染が報告されている。ただし、これまでペットから人間に感染したという事例は報告されておらず、ベルギー当局も「愛玩動物から人に感染する危険性はない。」 としているもののペットの飼い主にとっては安心できない状況だ。
このことに関して東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授のチームが新型コロナ感染症患者から分離されたウイルスのネコの呼吸器における増殖能とネコ間での感染伝播能を解析し、その結果を14日に公表している。
この研究の結果、新型コロナはネコの呼吸器でよく増え、ネコの間で接触感染することが分かり、ウイルスはネコに感染しネコの間で広がる可能性があることが示唆された。またウイルスに感染したネコは人間の場合と異なり明らかな症状を示さないと言うことも分かった。
この研究で明らかになった事実は、新型コロナがネコの間で広がり人間の感染源としてネコが媒介となる可能性があることも示唆している。5月1日、日本獣医師会は既に次のような対応を推薦している。感染した人間と濃厚接触のあった愛玩動物が感染する可能性は否定できない。よって、ペットを感染から守るために飼い主はペットの感染防御の対応をしっかりとることが最も重要である。猫は外に放さず室内で飼育することが適正飼養の観点からも望まれる。獣医師が診察を行う際は個人用防護具(マスク、ゴーグル、防護衣等)の使用を徹底する。
ネコやイヌに感染の可能性がある以上、ペットを散歩させる際は接触感染に十分注意する必要がある。ペット間でも感染が起こりうるのであるからペットが人と人の感染を媒介する可能性は高い。ペットの飼育管理には十分な注意が必要だ。(編集担当:久保田雄城)