新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言発令による爆発的感染の抑止の効果については今後検証されるべきものであるが、実績として爆発的感染と顕著な医療崩壊は回避されたことだけは事実だ。一方で経済に与えたマイナスの打撃についてはもはや検証する必要もないであろう。
2月25日の基本方針決定以降、国民間に外出自粛のムードが広がり飲食店は大きな打撃を受けることになる。4月の緊急事態宣言の発令によってさらに客足は減少し、5月の約1カ月の宣言延長や営業時間の短縮・自粛等も相まって閉店に追い込まれる店舗も続出した。
新型コロナ対策期間中の飲食店の経営状況の推移について興味深いデータがある。9日、クラウド型モバイルPOSレジを運営するポスタスが新型コロナ対策期間中の飲食店の売上動向についてPOSデータの集計を行い、その結果をレポートとして公表している。
レポートによれば、2月からの売上高の対前年同月比をみると、2月が98.2%と前月の増加傾向から減少に反転したというものの大きな落ち込みにはなっていない。ところが2月下旬の基本方針決定後の3月は68.0%と大きな落ち込みとなっている。
3月25日に東京都知事が「爆発的感染重大局面」を宣言し、4月7日に緊急事態宣言が発令された4月には23.2%と店舗の維持自体が困難なレベルまで大きく落ち込んでいる。5月は非常事態宣言が延長されたものの地域ごとに宣言が解除されたこともあり31.4%まで回復している。しかし、客数の対前年同月比をみると、2月が95.5%、3月が69.4%、4月が26.6%、5月は26.1%と、客数では5月での改善は見られない。
週別の推移を見るとゴールデンウイーク前半の4月27日の週が20%を割り底となっており、後半には30%近くまで急速に回復している。5月14日の39県解除、5月21日の近畿3県解除でそれぞれのエリアは36%まで回復、5月25日の全国解除により全国平均で43%まで回復しているが解除以前のゴールデンウイーク後半から大幅な改善に反転している。
解除宣言が回復を押し上げているのは事実だ。しかし、それ以前に4月下旬からの新規感染者の急速な減少を見て国民自身が自粛を先行的に緩和しているような動きになっている。緊急事態宣言の効果については検証が待たれるが、このPOSデータを見る限り国民の自発的な行動変容が感染状況にも経済にも大きく影響を与えているようだ。(編集担当:久保田雄城)